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テッド・ローゼンタール・トリオ × 岡フィル [コンサート感想]

テッド・ローゼンタール・トリオ × 岡フィル

バーンスタイン/キャンディード序曲(オーケストラのみ)
ガーシュイン/サマータイム
  〃   /Someone to watch over me ~優しき伴侶を~
  〃   /They can't take that away from me
  〃   /Fascinatin' Rhythm(トリオのみ)
 ~ 休 憩 ~
ガーシュイン/パリのアメリカ人(オーケストラのみ)
  〃   /ラプソディ・イン・ブルー
指揮:山本祐ノ介
共演:テッド・ローゼンタール・トリオ
  ピアノ:テッド・ローゼンタール
  ベース:植田典子
  ドラム:クインシー・デイヴィス
コンサートマスター:高畑壮平
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 テッド・ローゼンタール・トリオ、圧巻の演奏だった。岡山フィルのファンを自称する私をしても、この日のハイライトはどこかと言われると、トリオのみ(オーケストラ抜き)で演奏されたFascinatin' Rhythmだった、と言わざるを得ない。それぐらいこのトリオの演奏は圧巻!

 岡山フィルも頑張っていたのは間違いないが、今回はジャズの世界的トッププレイヤーたちと、クラシックではなくジャズの土俵で勝負するわけだから、このトリオにおいしいところを全部持っていかれるのは仕方がない。しかしオーケストラのみで演奏される「パリのアメリカ人」でも、演奏そのものは悪くなかったが、どこか余裕がない、全体的に硬い感じがして、いつもの岡山フィルらしく無い感じがあったのは、トリオの圧倒的な存在感を前に、肩に力が入ってしまったのだろうか?
 これが、例えばブラームスのピアノコンチェルトで勝負!という舞台設定だったら、オーケストラがジャズメンたちを飲み込んでしまうかもしれない。いや、やっぱりこのトリオの前には返り討ちにあってしまうかな。
 私も含めたクラシック音楽ファンの中には「ジャズのライブに行ってみようかな・・・」と思った人は多数いたはず。ジャズ音楽ファンの人達が「岡山フィルもなかなかやるわい。クラシックのプログラムのコンサートに行ってみようかな」と思っているかどうか、私には分からないが(ぜひ、そうあってほしいと思うが・・・)、岡山フィルのベスト・コンディションではなかったことは書いておこうと思う。
 クラシックの土俵で演奏させたら、今の岡山フィルは相当すごいんだよ。(まだ感想を書ききれていないけれど)5月の定期演奏会でのモーツァルトやブラームスでの音楽づくりは、そりゃーもうすべての音楽ファンが聞いても唸らせるような凄い演奏だったのだから。今回、テッド・ローゼンタール・トリオ目当てで会場に足を運んだ人も、騙されたと思って、ぜひ岡山フィルのコンサートにも来てほしいと思う。

 ここ数年はシェレンベルガーのもと、ドイツ音楽の低音弦を隙間なく響かせ、それを土台に旋律楽器を歌わせる、という音楽づくりをしてきたから、カーシュインのように、弦楽器が重厚な土台を作るのでは無い、音の行間にニュアンスや色気・ウィットを漂わせる、というのは、なかなかに勝手が違った、ということもあるだろう。ラプソディ・イン・ブルーも、テッドの編曲によるもので、何度かこの曲を演奏しているオーケストラにとっても、一筋縄でいかない、想定よりも手間ががかかったプログラムだったと思われる。それでも、弦楽器は8→6→4→4→3という小ぶりな編成ながら、その編成を活かして、特にささやくような甘い場面での表現は見事だったし、管楽器のソロの部分は「そう好きにさせるか」と言わんばかりに、ジャズメンからの煽りや挑戦に対し、時に見事に対峙し、時に溶け込み、時に玉砕し・・・。でも、気持ちは伝わってくる演奏だった。そんな中で高畑コンマスのソロは、流石の一言で、場数を踏んだプロの音楽家の経験値がものを言っている気がする。
 と、まあ、ジャズVSクラシックという軸で聴くとこういう感想になってしまうが、何よりも両者の波長がシンクロする瞬間が、この日の一番のごちそうだったかもしれない。Someone to watch over me でのテッドの繊細なタッチとクインシーの聴き手の脳をほぐしてくれるようなブラシでなぞるスネアの音の輪に入ってくる弦五部の色気のある音、あるいはラプソディ・イン・ブルーの中間部の、あの有名なメロディーが流れる時間の、愛しいほどの美しさ。見せ場では、山本祐ノ介さんが、父:直純さんを思い起こさせるような、思いがはち切れんばかりのタクト。
 全体的には、とても素敵な時間だったと思う。
 このトリオは何とも言えない気品を湛えていて、オーケストラのサウンドに本当に見事に付けていってくれる。共演2回目だそうだが、アンサンブル・ウィーン=ベルリンとの共演で、岡山フィルのアンサンブルのステージが1段上がったように、今回の共演もいいきっかけになるんじゃないかと思う。
 ラプソディ・イン・ブルーは本当に「名曲」だ。このトリオに掛かると、この曲には人生の機微のすべてが詰まっているように思わされる。例えば、ベートーヴェンやマーラーの交響曲に人生のすべてが詰まっているように・・・。
3回目の共演があるとしたら、岡山フィルのメンバーがどこまで食い下がれるか、見てみたい。そして、ジャズに限らず、こういうコンサート、関西フィルの「サマー・ポップス・コンサート」みたいに、恒例行事に育ててほしい。

 会場はクラシック畑の聴衆6割、ジャズ畑の聴衆4割といった割合だった。なんでその割合が分かったかというと、ベースやドラムのカデンツァ(ってジャズではなんていうんやろう?)の後に拍手をしていた割合で分かった。私のようにクラシック畑の聴衆は、やはり演奏中に拍手をするのは躊躇してしまうが、ジャズ畑の聴衆は絶妙の間で拍手を入れてくるので、感心する。

 惜しむらくは、もう少しお客さんが入ってほしかったこと。5割を切っていた(1000弱ぐらい?)かもしれない。それでも平日夜のコンサートとしては入っていたほうだったが・・・。

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