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国内オーケストラ業界と岡山フィル発展への研究【番外編(上):岡山フィル支援の機運の盛り上がりの背景】 [オーケストラ研究]

国内オーケストラ業界と岡山フィル発展への研究【番外編(上):岡山フィル支援の機運の盛り上がりの背景】
 岡山フィルの将来について勝手に語るシリーズ。今回はちょっと脱線する。
 前回の(その6)で予告していたように、今回は岡山フィルの経営の展望について触れるつもりで財源や体制整備について他のオーケストラの事例を踏まえながら途中まで書いていたのだが、昨今の岡山フィル支援に関する活発な動きを見て、掲載するのを記事にエントリーするのを保留にしていた。
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※岡山シンフォニーホールと城下交差点の夜景
この1年間の岡山フィルの体制整備に関するニュースは大きなものだけでも3つあり、
 ①市当局の支援強化の方針表明
 ②10月に地元行政・財界・オーケストラの支援者らが「育てる会」を発足
 ③山陽放送など地元マスコミでの露出の劇的な増加、
 などがそうだ。加えて2019/2020シーズンには定期・特別演奏会が年に6回となり、プロのオーケストラとしてのプログラムの充実も着々と進められている。今、ここで筆者が下手なことを書くのではなく、しばらくは事態の進展を見守ることに決めた。
 今回は岡山フィルの今の取り組みに最大の敬意を払いつつ、ではなぜ今、事態がこれほど急速に進展しているのか?そのことについて筆者が思う背景を整理しておきたい。
過去の失敗に学んだ岡山フィルの体制整備
 今年発足した岡山フィルを支援する民間組織である「岡山フィルを育てる会」は過去にも存在し、2005年ごろには小泉和裕氏をミュージック・アドヴァイザーとして招聘し、年間5回の定期演奏会を組むなどの体制充実を行っていたが、筆者の記憶では、個々のコンサートでは大いに盛り上がることはあっても、現在ほど岡山の街全体を巻き込まんとするような盛り上がりは無かったように思う。
 今から思えば、定期演奏会を一気に5回に増やすための聴衆層が形成されていなかったし、楽団は在東京や在阪のオーケストラからの助っ人に頼っていて、コンサートマスターをはじめ首席奏者のメンバーが演奏会ごとに変わり、いわば「岡山フィルの看板」を背負って立つ人が居なかった。ここが失敗の原因だったと考えられる。 
シェレンベルガーが岡山フィルのディレクターで居てくれることの奇跡
 現在の盛り上がりの起爆剤がシェレンベルガー氏の岡山フィル首席指揮者就任なのは間違いない。その衝撃は例えばサッカーでいえば、ジネディーヌ・ジダンやフランチェスコ・トッティーがJ2ファジアーノ岡山の監督に就任するようなものだ。
 シェレンベルガーが就任して岡山フィルの音はたった5年で激変した。自らも世界屈指のオーボエ奏者として名を馳せ、古稀を超えた現在でもその技術を維持し、岡山の聴衆を魅了する器楽奏者であると同時に優れたオーケストラビルダーでもある。スポーツで言えばプレイングマネージャーを見事にこなしていて、音楽づくりも着実に成果を上げる・・・よくこんな凄い人が岡山に来てくれたと思う。これは奇跡としか言いようがない。
 楽団員のモチベーションも非常に高く、定期演奏会での演奏内容が回を追うごとに充実していったことで、観客が増加し、定期・特別演奏会の回数は3倍に増加したにもかかわらず、毎回8割5分以上は客席が埋まる盛況だ。
 演奏面だけでなく首席コンサートマスターの就任、楽団専属の首席奏者の採用、それを受けての日本オーケストラ連盟に準会員として加盟し、名実ともにプロフェッショナルのオーケストラとしてのスタートを切った。
 以前ブログにおいて「日本オーケストラ連盟に加入し、行政を巻き込む」との提案を行ったのが2015年の8月だった。3年後に岡山フィルがここまで発展しているとは、筆者は思いもしていなかった。
 この背景には資金面での充実も大きい。常設オーケストラへの道は険しいが、岡山フィルのホームページには協賛企業のロゴでビッシリと埋まり、個人の賛助会員も倍増した。この岡山フィルの体制充実の背景に、何が起こっているのだろうか?
 私は2つの組織に注目をした。一つ目は「育てる会」の幹事企業であり、地元経済会のけん引役である中国銀行。もう一つは 岡山シンフォニーホールと連携協定を結び、学内のホールでコンサートシリーズを展開している岡山大学だ。
 この番外編(上)では、中国銀行を中心とした地元財界について考えてみたい。

背景に存在する『人口減少社会の中で岡山という街が生き残っていけるのか?』という危機感
 「人口減少社会の中での岡山の街の生き残り」というテーマは、一見岡山フィルとは関係の無いように見えるが、岡山フィルの未来と岡山地域の未来は一蓮托生。人口が減るということは若者が減り、働く現役世代(生産年齢人口)も減る。当然、県内GDPも減少し、ありとあらゆる業界で需要が減少する。これはたいへんな時代であり、大阪の為政者がヒステリックに叫んでいた「オーケストラじゃあ飯は食えない」という論調がますます力を持ってくる。岡山フィルは人口減少と、それに伴う経済衰退の時代にどのように存在意義を発揮できるか?が強く問われることになる。

 少し前の新聞記事になるが、11月1日の山陽新聞にこんな記事が掲載されていた。
〇岡山県人口減少、190万人割れ 33年6カ月ぶり、毎月流動調査: 山陽新聞デジタル|さんデジ
 岡山県の人口は減少し続け、社人研(国立社会保障・人口問題研究所)の予測では2040年には161万人にまで減少する見込みだ。
 他にも、11月6日にはこんな記事も。
〇地銀や路線バスの統合 制約緩和へ 未来投資会議/朝日新聞デジタル

 すでに、地元の金融機関ではこんなことも起きている。
〇第1部 膨張都市(1)相続マネー 東京潤い、地方はジリ貧: Lの時代へ 歪みを超えて:(2017年1月23日 山陽新聞)

 これらの記事は、これまで都道府県単位で維持されてきた、金融機関や地域交通の経営が全国的に行き詰まっている事を示している。
 特に3つめの記事『(1)相続マネー 東京潤い、地方はジリ貧』の内容は「人口減少ってこんなことも引き起こすのか・・・」と筆者は大きな衝撃を受けた。岡山から東京へ働きに出た「金の卵」の世代の資産を、子供の世代が相続した際、不便な地方銀行の口座を解約し、都市銀行などに預金を移す。それにより今後20年程度の間に51.4兆円もの資金が地方から東京へ移転する。実際に岡山県内の信用金庫では年間1億円ペースで東京の都市銀行へ預金が流出している。
 人が減り需要が減り、地方の経済が疲弊していくところへ、追い打ちをかけるように、「経済の血液」である投資資金が枯渇しかねないという状況がすでに深刻になっている。
 銀行同士の合併は独占禁止法により厳重に監視されているが、地方都市では金融機関同士の競争どころか、地域に投資資金を回していく原資すら東京へ流出していく。地方銀行同士の統廃合が容認されたことも、こうした状況も背景にあると思われる。
 すでに銀行については、地方の業界再編が進み始めている。
〇九州の地銀再編は、新たな段階に突入した ~十八銀・FFGの統合が意味するもの~(東洋経済オンライン)
 
 人口減少社会が次のステージに移ったとき、岡山の人口や経済活動の状況によっては、広島や関西の金融機関との統廃合の可能性は捨てきれない。中国銀行が広島や兵庫の銀行と経営統合ということになれば、地元経済の資本循環だけでなくシンクタンク機能もまるごと影響を受け、地域経済のイニシアチブが岡山の街から失われかねない。
 
  新聞や放送局についても、購読者・視聴者が物理的に減少するわけで、収入の屋台骨である広告収入が揺らぐことになる。地方マスコミ業界は新聞・放送局をグループで一体経営している形態が多く、少しのほころびで地方マスコミ業界全体の再編へ一気に加速する可能性が十分にある。
 今後は、金融機関を皮切りに、放送局や新聞社、ひいては国立大学に至るまで統廃合の嵐の時代に入るだろう。岡山が50年後にその独自性を保ったまま生き残っていくためには、銀行やマスコミ、大学といった『知識労働層の受け皿』を死守することが必要不可欠になって来る。
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※移転により役割を終える岡山市民会館から岡山シンフォニーホールを望む
 もちろん、新しい産業を興し、企業を誘致し、観光客や移住者を呼び込むことが直接の解決策になることは間違いないが、高度経済成長時代や人口ボーナス(増加)期ならいざ知らず、全国的に急激な人口減少が進む中で、産業構造を転換していくことは容易ではない。
 そうすると、地域の中に蓄積された富や資本を地域の中でどう循環させて、他の地域にはない付加価値を創っていくか?そして付加価値型産業を支える人々をどう呼び込み、付加価値の高い『本物』を創る人材をどう呼び込んでいくか?さらに岡山の人々が付加価値を生み出す文化を循環させる社会をどう回していくか(その6で述べた『文化芸術資本が循環する社会』をどう創っていくか)が重要になってくる。その先に、岡山の人々が自分の街に誇りを持ち、規模は小さいかもしれないが、光り輝くような付加価値を生み出す文化的土壌が育っていくことが理想である。
 今年の10月に就任した首席奏者たちは、とても実力を持った奏者が揃って、見事な演奏を聴かせてくれている。つまりは『付加価値の高い『本物』を創る人材』を岡山フィルが呼び込めたのだ。岡山が関西や広島などの大都市に飲み込まれず・吸収されずに独自のアイデンティティを保有して生き残っていくための一つの処方箋が見えた瞬間のように筆者には思える。
 岡山の地域の経済の血液を回す中国銀行も、岡山の経済を支える地場産業企業からなる財界も、そして山陽新聞や山陽放送などの地元マスコミも、例えばトヨタやユニクロのように「岡山を捨ててもっと儲かるところで商売をしよう」という訳にはいかないのだ。
 こうした地場の企業が岡山フィルに注目し始めているのも、人口減少という厳しい未来の中で、岡山フィルという芸術を創造する集団に明るい未来を見出そうとしているのではないだろうか。
 次回は、もう一つのけん引役である大学、特に岡山大学について触れていこうと思う。 
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