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行けなかった岡山フィルの第55回定期のプログラムを貰う [岡山フィル]

 3月11日~12日にかけて、普段の5倍ほどのアクセスを頂きましたが、岡山フィルの第55回定期演奏会には、わたくし、仕事で行っておりません。。。
 この日は私と同業者もかなりの割合で欠席したみたいで(この3月2週目の週末っていうのが、私の居る業界では特異な日・・・なんですよね。私は別種の仕事で欠席でしたが)、ホールの入りが気になりますが・・・
 ネット上での感想を拝見すると、演奏は非常に良かったそうです。
 今日、お彼岸のお供え物を買いに某百貨店(岡山フィル企業会員になったら名前をクレジットするようにします(爆))に行くついでに、シンフォニーホールによって、さらぴんのチケットを見せて当日のプログラムを貰ってきました。
 気になっていたのは、今回の定期演奏会から首席奏者の試用期間が開始されていること。メンバー表を拝見すると、やはり今まで登場なさっていた在東京・関西のオーケストラの助っ人主席の名前が無く、フリーの奏者の名前が多かったです。
 ただし、チェロの首席の松岡さん(都響)、ホルンの久永さん(読響)の名前があるなど、これらのパートはまだ決まっていないか、もしくは首席以外のポジションで参加していた可能性もありますね。
 メンバーの中には、若手の方も居れば、「うそやろ!?」っていうぐらい実績のある方(N響元首席の方や、著名室内楽団体の所属の方)もいらっしゃって、これらの方が岡山フィルの首席として正式に就任すると、これまでと同等の演奏水準は保証されるばかりか、楽団としての一体感が増すことを考えると、もっと良くなっていくのではないか?と期待してしまいますね。

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NHK交響楽団倉敷公演 指揮:ブルニエ Pf:上原彩子 [コンサート感想]

NHK交響楽団 倉敷公演
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番
 ~ 休憩 ~
ドヴォルザーク/交響曲第8番
指揮:ステファン・ブルニエ
ピアノ独奏:上原彩子
コンサートマスター:篠崎史紀
2018年3月10日 倉敷市民会館
 会場はほぼ満席。平日夜の倉敷市民会館を満席にできるのは、このN響ぐらいだろう。さすがの動員力です。
 N響岡山定期消滅後も、なんだかんだいって2年に1回は岡山に来てくれるN響。パーヴォ・ヤルヴィ就任後は、TVで見ていても、実演でもどんどん高みへと昇って行っている感がありましたが、ここ倉敷でも益々充実の演奏を披露してくれた。ソリストの上原さんは、抜群のテクニックと美しい音色、打鍵の多彩さは健在。終演後は物凄い盛り上がり。
 指揮のブルニエは、本場の歌劇場で実績を重ねる本格派。躍動感溢れる音楽が信条のようで、旋律の歌わせ方も巧みで風景が目に見えるような音楽づくり。メロディメイカー:ドヴォルザークのボヘミア愛を見事に表現。大満足のコンサートだった。
(3月16日 追記)
 コンサートから時間が経ってしまいましたが、帰りのJRの中でメモしたデータを頼りに感想を続いて書こうと思います。
 前半のラフマニノフの3番。2年前にバーミンガム市響をバックに河村尚子さんが同じホールで同じ曲を演奏し、強く心に残る演奏を披露してくたが、今回の上原さんも凄い演奏でした。どちらの演奏も甲乙付けがたい、恐ろしくハイレベルな演奏。
 上原さんは、第2楽章などでの繊細で柔らかい表現は、真綿をつかむようなタッチで、光に包まれるような幸せな音を奏でる。その一方で、第1・3楽章の強い打鍵が要求される場面の迫力も、客席で聴いていると気圧されるような迫力があった。特に、第3楽章の後半で1度ギアを上げた瞬間は驚きました。「ラスト・シーンまでには、まだまだ曲が残っているのに、すでにこんなに強い音を出して、最後はどうやって締めくくるのか?!」そう思って聴いていくと、ラストシーンではさらにもう一段ギアを上げた強い打鍵で、N響を向こうに回して大立ち回りを演じた。いやはや、これには本当に参った。
 一方で、上原さんはオケとともに大きな音楽を作って行こうとする志向が強く、指揮者だけで無くコンマスのMAROさんや、第1・2楽章の管楽器と合わせる場面では、その間パートの方を向きながら、一体的に音楽を作っていた。
 N響も冒頭からの弦の翳りのある音から「ハッ」とさせられ、宇賀神さんのファゴットに早くも心をつかまれる。木管はクラリネットもフルートもオーボエも、岡山ではなかなか聴けない見事なソロ・合奏を聴かせ、弦楽器も終始つややかで、上原さんの音とも絶妙に合っていた。
 本当に、聴き応えのあるコンチェルトだった。
 後半はドヴォルザークの交響曲第8番。このところのN響の好調さが感じられる若々しく躍動感あふれる演奏だった。
 岡山にはN響はよく来てくれる方だと思いますが、以前は、確かに文句の付け所の無い、まったく綻びの無い演奏をするんだけれども、なんとなく「管理された演奏」を聴かされるようなところがあった。
 今のN響は、本当に充実していると感じる。クラシック音楽館でも、最近は毎回のようにいい演奏を聴かせてくれているし、いい具合に世代交代が進んで、個々の奏者のモチベーションが極めて高そうだ。ヴァイオリン・ヴィオラ部隊なんて、弓ブチブチ切りながらの躍動感あふれる演奏に、「地方公演でここまでやってくれるんだ」と感激した。
 ブルニエも、さすがに歌劇場で実績のある指揮者。中央ヨーロッパの情景が目の前に浮かんでくるようで、名曲中の名曲の旋律美のうま味を骨の髄まで引き出していく。
 今やザルツブルグ音楽祭にも呼ばれるほど、国際的評価が定着したN響、これぐらいはやって当然かもしれない。同じホールでこれまで聴いて来た、パリ管・RCOやゲヴァントハウス管、これらの超・超一流オーケストラに、テクニックだけでなく音色の美しさなどでも追随してきている感じがあります。ただ1点、物足りない点を挙げると、これらのオーケストラには、トゥッティーの際には座席に体が押し付けられるような圧迫感を感じる様な音の圧力がありました。N響も決して鳴っていないわけでは無い(去年の新日本フィルよりははるかに鳴りが良かった)のですが、やはり世界の超・超一流のオーケストラが奏でる、夢のように美しい音の洪水に身体が押し倒されるような圧倒的な力・・・、この部分が欲しいな、というのが正直な感想です。
 N響の岡山定期演奏会が無くなった当時は、それを惜しむ声が聴かれましたが、4年前のヴァルチュハ&諏訪内晶子、2年前の井上道義との岡山公演など、なかなかの座組でやってきてくれています。中国・四国地方の巡回公演では、岡山は絶対に外せないマーケットなのだろう。ほぼ2年に1回のペースで聴けている印象だ。
 岡山フィルの定期演奏会の回数は増えたし、結果的に岡山のファンにとっては、これで良かったんじゃ無いでしょうか。

 アンコールは、スラヴ舞曲集第2集から第2曲。


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三浦文彰 ヴァイオリン・リサイタル 岡山公演 [コンサート感想]

三浦文彰 ヴァイオリン・リサイタル
ヴァイオリン:三浦文彰
ピアノ伴奏:イタマール・ゴラン
 
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 K.306
R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 op.18
~ 休 憩 ~
(作曲者・曲名失念)赤とんぼの変奏曲?
(曲目自信なし)バルトーク:ルーマニア民俗舞曲から?(あやふやな記憶)
チャイコフスキー:「懐かしい土地の思い出」からメロディー
チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ ハ長調 op.34
チャイコフスキー:感傷的なワルツ op.51-6
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 op.28
 
2018年2月26日 岡山シンフォニーホール
 
 後半プログラムが変更になって、三浦さんからアナウンスはされたものの(ホールの残響で聞き取りにかった、あと演奏中にはメモを取ったりしない主義なのと筆者が記憶力に乏しいため)、当日は楽章構成も何も書いていないコンサート案内チラシが配布されたのみで、プログラムが無いので曲目を確認することも出来ません。主催者からの掲示やHP等での事後フォローもないので、曲名があやふやなままです。赤とんぼのメロディーの変奏曲のような曲と、バルトークのルーマニア民俗舞曲から1曲?(だと思うんだけど)。あと、チャイコフスキーの「懐かしい土地の思い出」のメロディー、これぐらい有名な曲ならばわかるんだけれども・・・。コンサートに行って、演奏された曲がわからないまま、というのは気持ちが悪いものです。
 
 三浦文彰さんの演奏は、大フィル定期演奏会で演奏されたハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲での凄演が強く印象に残っています。
 
 会場は2階・3階を閉鎖し、1階席+バルコニー席の5割ぐらい(600人ぐらい?)の入り。三浦文彰といえば大河ドラマ「真田丸」のソロ演奏で有名になり、メディアにも露出が多いアーティストの一人だと思うが、月曜の夜のコンサートということを差し引いても、もう少し入ってもいいんじゃないの?という印象。
 
 演奏は、後半のヴァイオリンの名曲を並べたプログラムでの演奏が、やはり凄かった。文句なしです。超絶技巧のみならず音にコクと照りがあり、いつまでもず~~っと聴いていたい美音だった。
 
 前半は、久しぶりに1階に座ったこともあって、前半1曲目のモーツァルトのソナタの演奏が始まった瞬間、自分の頭のはるか上を過ぎていくようなヴァイオリンの音に、正直言って戸惑った。10分ぐらいすると耳が慣れてきたが、ヴァイオリンのソロといえども、やはりこのホールは2階席で聴きたい。
 三浦さんの演奏は、まさに天衣無縫というべきもの。美音のささやきのようで魅了されたが、(楽章間に拍手が入ったこともあって)曲全体の構成感がやや不足していて、「モーツァルトのソナタを聴いた」というよりも、小品を3曲聴いたような印象が残った。
 
 しかし、R.シュトラウスのソナタでの演奏は三浦さんの美音に磨きがかかり、素晴らしい演奏になった。現在の三浦文彰を聴くならば、後半のロマン派の小ピースか、もしくはこのR.シュトラウスのようなコテコテの後期ロマン派の耽美的な音楽が合っているようだ。かといって外連味のある演奏ではなく、的確に音をとらえてく、どちらかといえば誠実な演奏。三浦さんの奏でる音の美しさがとにかく際立っていて、音楽そのものが持つ美しさをよく引き出していた。
 そしてピアノのゴランさんの演奏がこれまた素晴らしく、粒が立った音を変幻自在の音色で彩り、もはら伴奏の域を超えている。さすが世界屈指のピアノ室内楽奏者だと思った。三浦さんにとってはこれほど心強くも手ごわいピアノ伴奏者はいないでしょうね。三浦さんの美音とゴランさんの絶妙のタッチから繰り出される美音の饗宴に、陶然と耳を傾けた。
 
 アンコールはグルックのメロディー(歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」の中の曲のようだ)、そしてクライスラーの中国の太鼓。
 
 松江公演のプログラムには、ベートーヴェンの6番ソナタと、ブラームスの雨の歌を並べていて、プログラム的にはそちらの方が良かったな。次回のリサイタルはクラシックのソナタを並べるガチンコ・プログラムで聴きたいと思いました。

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「三浦文彰 ヴァイオリン・リサイタル」の感想の前に [クラシック雑感]

 昨日、三浦文彰さんのヴァイオリン・リサイタルを岡山シンフォニーホールへ聴きに行きました。その感想を書こうと思っていたんですけど、演奏そのものとは関係のない、運営面で腹の立つことが多くて、いったんそのことについて書き散らして、頭の中から追い払ってから三浦さんの演奏については、また後日書きたいと思う。
 
 私は音響の素晴らしい岡山シンフォニーホールを愛している、このホールは音が素晴らしいだけではなく、主催公演のスタッフの教育が行き届いている。サントリーホールのように全員がプロのホールスタッフというわけではなく、ボランティアのスタッフが大半を占めるが、彼らに対する教育が行き届いていて、「何を差し置いても音楽が主役であること」という思想が徹底されているし、「その存在を忘れるぐらい、さりげなくもしっかりと仕事はするスタッフ」を送り出している。岡山フィルの定期演奏会をはじめ、彼らの働きに毎回敬意を表するものである。
 
 しかし、ホールが主催しない、いわゆる貸館公演の場合は、その事業主催者が会場運営を行うのだが、岡山はその質が概してよくない。
 
 昨日のコンサートは、バイトくんのスタッフだけがやたら多かった。その割に印刷されたプログラム(有料も含めて)が配布されておらず、まあ、三浦さんがマイクを取ってプログラムについて説明してくれたからよかったようなものの、その日のコンサートへの思いやプログラムの意図をくみ取る重要な手がかりがなかった。せめてモノクロでもいいから楽章構成ぐらいは書かれたプログラムが必要だろう(イマドキ、たとえコンサート当日でもオルフィスで印刷すれば、700枚のプログラムなんてあっという間に出来るだろう)。前半のモーツァルトとR.シュトラウスのソナタでは毎楽章拍手が起こって間延びしてしまった。
 
 それぐらいはよいとしましょう。問題なのは、そのバイトくんとマネージャーか社員さんたちが、会場の入り口からホールのロビーに至るまで(あえて言いましょう)ムダに動き回って「携帯の電源を切れ」だの「カメラの撮影は見つけたらしょっぴく」だのと、常に声を張り上げている。コンサート前の非日常の時間が台無しだ。
 こちらも気になりだしたらだんだん腹が立ってくるもので、マネージャーっぽい人物が若いバイトの兄ちゃんを集めて何やら指示をだしているのだが、そこ、思いっきりホール内への出入り口の導線に被ってるから!一番偉そうなあんたが一番、客の邪魔だから!もうちょっと、人目を引かないところで集合をかけろよ!誰にアピールしてるんだ!?などと、だんだん腹が立ってくる。
 逆にバイトくんが「俺たち、邪魔になってるんじゃないかな~」と、通路に目線をおくっていたのが印象に残る。
 演奏が始まると、バイトくんは起立してドアの前に立っている。ここで嫌な記憶がよみがえる、4年ほど前に佐渡裕&兵庫PACオケの岡山市民会館でのコンサートで、会場見張りのバイトくんがじっとしていられなく、ずっとそわそわしていて、聴き手のこちらも気になって集中できなかったこと、あのコンサートも同じ主催者だっけなぁ。
 でも、この日の会場見張りの二人のバイトくんは偉かった。直立不動、微動だにせず、仕事を全うしていた。でも、岡フィル主催のコンサートみたいに会場見張りの子は椅子に座らせましょう。岡山シンフォニーホール主催のコンサートの運営を見て勉強していないのか?マネージャーさん。

 休憩時間中にはいり、いつもならロビーに出るのだが、「ロビーに出たら、また『携帯の電源を切れ』だのとオッサンが声を張り上げてるんやろうなあ・・・、そんなん、三浦さんの美音の余韻が台無しやん」と思って、ホールの中に引きこもっていたら、なんと、そのおっさんがホールの中に入ってきて、「携帯の電源を切れ、演奏が始まったら客席には入れない」と、注意をして客席を回っていた。ホンマ、首を絞めたろかと。
 失礼・・・取り乱しました。
 確かに、携帯の電源やカメラや録音禁止の注意は必要。実際、昨日も演奏中に携帯が鳴ったしね(おっさんの汚い声の注意を聴かされた上に、三浦さんの演奏中に着信音を間近で聴かされた自分、ホントに踏んだり蹴ったり・・・)。
 でも、昨日のやり方は「何を差し置いても音楽が主役」であるクラシックのコンサートでの注意喚起の方法としてどうなのか?じっくり反省をしていただきたい。くらしきコンサート主催公演では、プラカードを持って回っていたり、あるいは岡山フィルの公演では女性の声でのアナウンスで、注意喚起しています。
 おっさんの肉声で大声で叫んで回る、っていう対応は効果がないばかりか、最悪の対応の仕方だと思う。私は美しい音楽を聴きに来たんです、オッサンの声を聴きに来たんじゃないよ。前半の三浦さんの美音の余韻が台無しだわ、ある意味フライングブラボーと同じコンサート破壊行為ですよ。それを主催者が犯してどうするの?
 昨日のコンサートの主催者に告ぐ、あなたがたはイベントのプロかも知れないが、クラシック音楽のコンサート運営のプロではないよ。先にも書いた通り、プロのホールスタッフやレセプショニストは、仕事はするが存在感は消す。そして、そこで演奏される「音楽」が引き立つために、どうすればいいかを真剣に考えて行動する、そういう対応ができる人です。
 クラシックのコンサートが、なぜセットを組んだり照明演出をしないのか?オーケストラ奏者をはじめ、なぜ演奏者は燕尾服やシンプルな服装で演奏するのか?すべて主役である音楽にすべてを捧げるためです。
 コンサートが終わって、追加されたプログラムやアンコールの曲目を確認しようとロビーやエントランスを見回したが、どこにも貼られていない(僕が見落としたんでしょうか?でも、他にも「アンコールの曲目がわからない」と探しているお客さんがたくさんいました)。ホント、最後まで仕事のなっていない運営に、笑けてきました。
 それに対比して、普段のシンフォニーホールの仕事がいかに素晴らしいかもよく解った。頼むから、今後は岡山シンフォニーホールのプロの仕事に準拠した会場運営をしてください。よろしくお願いします。

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クァルテット・ベルリン=トウキョウ 2018冬 岡山ルネスH公演 [コンサート感想]

ルネスクラシックシリーズ Vol.17
クァルテット・ベルリン=トウキョウ 2018岡山公演
 
モーツァルト/弦楽四重奏曲第19番ハ長調「不協和音」
バルトーク/弦楽四重奏曲第1番
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第9番ハ長調「ラズモフスキー3番」
 
守屋剛志(第1ヴァイオリン)
モティ・パヴロフ(第2ヴァイオリン)
ケヴィン・トライバー(ヴィオラ)
松本 瑠衣子(チェロ)
 
2018年2月10日 ルネスホール
 
 記録を辿ると、このクァルテット・ベルリン=トウキョウ(以下、QBTと略)を聴くのは6回目になる。岡山という、決してクラシック音楽が盛んとは言えない土地で、これほどのレベルの弦楽四重奏団の演奏を、まるでシリーズのように毎回違った名曲で楽しめる・・・。これほどの僥倖があろうか。
 しかも第一ヴァイオリンの守屋さんは、東京芸大在学中には地元のアマ・オケなどの演奏会にソリストとして登場していて、その並外れた音楽性を存分に発揮されていた。それが今や世界的室内楽団体を率いて毎年凱旋してくださる。2010年以降の岡山のクラシック音楽シーンを後世で語られるとき、シェレンベルガーの岡山フィル首席指揮者としての活躍と、このQBTの連続室内楽シリーズが語られ続けるだろう。 
 そんなわけで、僕がこのQBTのコンサートにおいて冷静に感想を書くことなどできないわけでありますが、今回も本当に満足のコンサートだった。
 先に、バルトークの1番から。同じくバルトークの3番を、2年前の県美公演で聴いており、当時もQBTのアンサンブル能力の桁外れの高さに舌を巻いたのだが、今日の公演は3曲とも配置を入れ替えており、守屋さん(1stVn)とパブロフさん(2ndVn)が対向配置で向かい合い、守屋さんの隣にトライバーさん(Va)、その隣に松本さん(Vc)という配置だった。QBTは守屋・松本の二枚看板という印象だったのだが、この配置でパブロフさんと守屋さんが掛け合う構図が明瞭になり、守屋・松本・パブロフの3人の奏者が真剣で殺陣を繰り広げ、そこへトライバーが割って入る隙を伺うような、そんな緊張感が痺れる掛け合いとなった。バルトークの真骨頂の民俗舞曲調の場面での燃焼度は、以前にもまして高い。やはりQBTは凄い。
 モーツァルトの柔らかい息遣いと「間」の変化は、「やはり世界トップレベルのクァルテットは違う!」と思わせるに十分。ベートーヴェンのラズモフスキー・セットは、3年前に第1番を聴いているが、今回の第3番は貫禄と迫力十分の横綱相撲。前回の「大フーガ」が、一生心に残るような演奏を聴かせてもらったのと同様、今回もQBTのベートーヴェンを聴かせてもらった。ベートーヴェンの気高くも美しい音楽が、心の襞に沁みわたるようだった。
 もっと詳細に感想を書きたいのだが、物書き仕事が溜まっているので、とりあえず筆を置きます。気が付いたことは箇条書きで追加するかもしれません。
 
 
 ・守屋さんのプログラムトークによると、今回のプログラムの変更には理由があって、差し替え後のモーツァルトの「不協和音」はベートーヴェンの「ラズモフスキー第3番」に多大な影響を与えている、ハ長調という調整も同じなら曲のモチーフも類似性が見られる。しかし、だからこそモーツァルトとベートーヴェンの違いが分かるのではないか、ということで差し替えを行った、とのこと。
・アンコールには、当初のプログラムに組まれていた、ハイドンの弦楽四重奏曲第76番ニ短調「五度」から、第4楽章。
・今回のツアーでは岡山公演が2回組まれていて、2月6日には岡山大学Junko Fukutake Hall で、ハイドン79番、バルトークの2番、ショスタコーヴィチの9番を演奏した由。こちらにも行きたかったが、火曜日昼間の公演で断念せざるを得なかった。。。

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岡山フィル特別演奏会 ニューイヤーコンサート2018 シェレンベルガー指揮 [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団 ニューイヤーコンサート
モーツァルト/歌劇「魔笛」ハイライト
~第1幕~
 序曲
 No2.アリア「私は鳥刺し」
 No.3アリア「なんと美しい絵姿」
 No.4レチタティーヴォとアリア
 「ああ、怖れおののかなくてもよいのです、わが子よ!」
 No.7二重唱「愛を感じる男の人達には」
~第2幕~
 No.14アリア「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」
 No.15アリア「この聖なる殿堂では」
 No.17アリア「ああ、私にはわかる、消え失せてしまったことが」
 No.19三重唱「愛しい人よ、もうあなたにお会いできないのですか?」
 No.20アリア「パパゲーノ様が欲しいのは一人の可愛い娘っ子」
 No.21二重唱「パパパの二重唱」
 No.21フィナーレ「太陽の輝きが夜を追い払い」
  ~ 休 憩 ~
リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェヘラザード」
 
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ザラストロ:渡邉寛智(バス)
タミーノ:柾木和敬(テノール)
夜の女王:阪本清香(ソプラノ)
パミーナ:池田尚子(ソプラノ)
パパゲーナ・案内役:川崎泰子(ソプラノ)
パパゲーノ:鳥山浩詩(バリトン)
ゲストコンサートマスター:依田真宣


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 「パースペクティヴ!!」
 この素晴らしいホールに岡山フィルあり!


 今日の後半のシェエラザードの演奏を、無理やり一言で表すとこれに尽きるのではないかと思う。

 ベートーヴェンやブラームスで魅せたどっしりとした構築美でもなく、去年の「ばらの騎士」組曲で魅せたロマン派の黄昏の燃えるような美しさでもなく、今日のシェエラザードはとにかく華やかにオケが鳴りまくった!開館25年を超え、熟成の極みの時期に入った岡山シンフォニーホールの絶好の音響を最大限に味方につけ、オーケストラのポテンシャルとホールのポテンシャルが見事に融合され、3Dの空間の中に遠近取り混ぜて様々な音が振って来る、このホールならではの体験ができた。 

 聴き慣れているはずのシェエラザードから、思いもしなかった音があちこちから聞こえてきて、宝石箱をひっくり返したような、どころの話ではなく、このホールそのものが美音の鉱脈であることを、今回ほど心底実感できた演奏会は無かったです。このホールには、やはり管楽器の高音や様々なパーカッションが登場するような華やかな曲が似合います(予算はかかるんでしょうが・・・)。


 シェレンベルガーさん、ベートーヴェン・ブラームスが中心レパートリーだと思っていたのですが、オーボエ演奏の録音ではフランス・イタリアものも得意だし、今回から3回連続で続くロシアものシリーズの1回目は、これ以上無いぐらいに見事に料理。今回のモーツァルト、R=コルサコフもそうですが、曲のイメージが明確で音楽が体に浸透してくるような心地よさがあります。まだまだ少なくとも10年は岡山でやっていただくレパートリーがありそうですね(笑)


 この日の編成は12型2管編成。1StVn12→2ndVn10→Va8→Vc8、上手奥にCb6本。
 お客さんの入りは8割ぐらい入ってたんじゃないでしょうか。依然として好調な動員が続いています。
 
 この日のコンサート、開演前からチェロアンサンブルにシェレンベルガーさんのプレトークと、イベントが目白押しだったんですが、予定外のことが起こって、ホールに着いたのが開演約30分後・・・。前半を聴くことは諦めていたんですが、「魔笛」のハイライトが1時間を超えるボリュームがあったので、第2幕から入れてもらえました。
 もう演奏が始まりそうだったので自席に行くのを諦め、おそらくこのホールの中で屈指の「音の悪い席」である(爆)、2階席の一番奥で聴いたんですが、6名の声楽の皆さん、その位置までよく声が届いていました。(自分が遅れたために)いきなり夜の女王のアリアから聴くことになったんですが、一気に惹きこまれた。
 
 オペラ・アリアのハイライトとはいえ、振り付けを交えて歌を歌われていて、特に鳥山さんのパパゲーノはその場面が見えるようでした。女声の3名は歌の素晴らしさはさることながら、3名とも抜群のヴィジュアルに加え、それぞれの役にあった佇まいで、僕のようにオペラにあまり馴染みのない人間には、これは大切な要素だったと思う。
 第2幕だけでも見られて本当に良かった。
 
 休憩後にいつもの定位置に戻り客席を見渡して驚いた。若い年齢層のお客さんが多い。60歳~70歳ぐらいが主要客層なのは他のオーケストラと同様だが、30代~40代ぐらいの年齢層もそれに対抗できるぐらいのボリュームがある。
 
 後半のシェエラザードが始まったのは開演から1時間20分が経過していた。シェレンベルガーが組むプログラムは、毎度毎度ボリュームが満点である。聴きに来た客を絶対に満足させるという意思が伝わってくる。
 音響の悪い席からいつもの定位置に来ると、このホールの美点:音の広がりやどんな大音量でも包み込んでしまう懐の深さ、そして細かい息遣いまで聴こえて来る繊細さを実感した。前半、音の良くない席に一度座ることで、かえってこのホールのポテンシャルを明確に実感した。
 
 今回のコンサートマスターはゲストの依田さん。東京フィルのコンサートマスターのようだ。僕は、昨年10月に就任した高畑コンマスのソロを楽しみにして来たのだが、少々肩透かしを食らった感じ。予定が合わなかったのでしょうけど。
 しかし、この依田さん、この年齢(たぶん20代後半?)で東京フィルのコンマスに採用されるだけあって、凄いソロだった。ソロがある時間帯は「これはもう、ヴァイオリン協奏曲だな」と思うほどの存在感があった。
 
 シェエラザードは和声学や管弦楽技法の大家でもあったリムスキー=コルサコフ渾身の名作で、色々なオーケストラが「勝負曲」にしている曲。それだけに去年の京響をはじめ、過去に生演奏に接した回数が多い曲。

 僕はこの曲について、愛の物語ではなく、人間不信に陥り暴君と化した権力者を、物語の読み聞かせセラピーで癒していく話、だと考えている。だから、アラビアンナイトの物語の上っ面をたんに音楽で語っているだけでは凡百の演奏に埋没してしまう。童話や昔話の中に、物事の心理や人間の業や性が描かれているように、この曲にも権力と人間の危険な関係、自我の崩壊によって新たな人格の再生があることなどを描いているように思う。
 そういう視点で聴いても、シェレンベルガーのタクトさばきは見事だった。

 まず、第1楽章の冒頭からトロンボーン・チューバ、低弦などで提示される狂気の権力者:シャリアール王のテーマが行き場のないエネルギーと、奈落の底へ落ちていく心の闇を描き出していたし、物語を読み聞かせるシェエラザードを表すヴァイオリンのソロも、夢のように美しい一方で、第1楽章から第3楽章までのソロを取る場面では物語の中に溶け込んでいつつも、一歩引いた冷静な目線を感じさせている。これによって、今聞いている世界はシェエラザードが読み聞かせている架空の世界であることを、聴く者の頭の片隅に意識させていた。このシェエラザードを表すヴァイオリンのソロの取り扱いを間違うと、この曲は単なる情景描写の交響詩になってしまう。
 
 個々の場面ではシェレンベルガーさんらしいがっしりとした曲の躯体がありつつも、節回しのこぶしの効かせ方は、フランスオーボエ名曲集やイタリアバロック協奏曲集などの名盤で聴かせる、ロマンと歌心にあふれる鮮やかなオーボエ演奏と通底するものを感じた。
フランス・オーボエ名曲集

フランス・オーボエ名曲集

  • アーティスト: シェレンベルガー(ハンスイェルク),デュティーユ,ベネット,サン=サーンス,プーランク,ボザ,ケーネン(ロルフ)
  • 出版社/メーカー: 日本コロムビア
  • 発売日: 2005/12/21
  • メディア: CD
イタリア・バロック・オーボエ協奏曲集

イタリア・バロック・オーボエ協奏曲集

  • アーティスト: イタリア合奏団,シェレンベルガー(ハンスイェルク),アルビノーニ,ヴィヴァルディ,サンマルティーニ,A.マルチェルロ
  • 出版社/メーカー: 日本コロムビア
  • 発売日: 2010/08/18
  • メディア: CD
 それにしても(冒頭でも書いた通り)、やっぱりこのホールは凄い!こういうパーカッションが華々しく、木管の(特に高音の)饒舌な曲でこそ、本領を発揮する。これまで十数回は生演奏で聴いているこの曲から、これまで聴こえて来なかったことがたくさん聴こえてきた。
 
 第4楽章のシンドバッドの海が荒々しく再現される場面でのハープのグリッサンドが、あれほどクリアに聴こえて来る体験は初めてのことだったし(ハープは朝比奈時代の大フィルの名ハーピストの今尾さんが乗っていた)、その際に何度も打ち鳴らされるシンバルは、振動を利用して擦りあげるような奏法で、嵐の場面を描いていると同時にシャリアール王の頑なな自我の最後の断末魔を現しているような劇的なものだった(その頑なな自我は、タムタムの一撃による倍音の中に消えていったように感じられた)。
 第2主題の金管のファンファーレに呼応して奏でられる、弦のピチカートは、さながら何百台もの竪琴が自分の意思を持って陽気に踊っているようだった。
 
 パーカッション陣も特に第4楽章では隙の無い対話を繰り広げ、金管も迫力満点ながら、デリケートなコントロールとハーモニー重視の姿勢が貫かれていた。特筆すべきは木管で、ソロも見事(ファゴットうま過ぎ!)、合奏も溶け合って素晴らしい音だった。お名前を検索すると今回の助っ人主席にはフリーの方が多かったようで、この中に正式な岡山フィル首席奏者に残ってくれる方がいらっしゃることをお祈りしたい。
 
 弦楽器も好調さを維持、高畑コンマスに代わってからオーケストラの一体感が飛躍的に向上したのだが、今回、客演コンマスが入っても、一体感は失われなかった。
 細かいダイナミクスをごく自然に表現されていることと(息が合う、というのはこういうことかと思う)、弱音部でも一つ一つの音がしっかりと演奏されていて、この曲に関してはffは近景を、ppは遠景を表していることが多く、全体を通して立体的かつパースペクティヴな音楽が、岡山シンフォニーホールの空間に響き渡った。その瞬間のなんという至福の時間であったことだろう。
 とりわけ、第4楽章の燃焼度は相当なもので、聴く者だけではなくオーケストラ奏者自身もみな、カタルシスを味わった演奏ではなかったでしょうか。
 僕は、残念ながら次回(3月)の定期演奏会は仕事のため泣く泣く欠席です。 シェレンベルガー指揮のショスタコーヴィチの5番交響曲は関西フィルで聴いていますが、きっと岡山でも素晴らしい演奏になると思います。迷われている方がいらっしゃたら聴くべし!ですよ。

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ベルリンの壁「解放」コンサート ベルリン・フィルによるベートーヴェンの7番 [クラシック音盤]

 昨年10月の岡山フィルの定期演奏会でベートーヴェンの7番を聴いていたとき、第4楽章でのあまりの熱量のある演奏と、シェレンベルガーがあまり見せない我を忘れるような激しいタクトに驚き、当日のブログにこう書きました。


『この日のコンサート、ここまでが非常にハイカロリーかつ異常な集中力連続だったので、「最後まで持つかな?」と心配したのもつかの間、シェレンベルガーのタクトの勢いは一層熱を帯びていきます。これほど激しいタクト捌きを見せたのは、東日本大震災被災者鎮魂のためのドイツ・レクイエム以来です。』


 我を忘れたように激しいタクトを見せるマエストロ、それはこの6年間で「ドイツ・レクイエム」とこのベートーヴェンの7番の2回のみ。滅多に見せない激しさに圧倒されると同時に、私はある歴史的コンサートの演奏を思い出していました。それは、ベルリンの壁崩壊のわずか3日後にベルリン・フィルハーモニーへ東ベルリン市民を招待して行われた記念コンサートです。


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「ベルリンの壁 解放記念コンサート」

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番(※)
   〃   /交響曲第7番


指揮&ピアノ独奏(※):ダニエル・バレンボイム

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1989年11月12日 ベルリン・フィルハーモニーでのライヴ録音

ソニー・ミュージック


 第4楽章の途中で「シェレンベルガーさんは、このコンサートについて思い返しているのではないか」と感じたのだが、そのコンサートにシェレンベルガーが参加していたかどうか、その時点ではわからなかったし(ベルリン・フィルともなると2人以上もも首席奏者を擁しているので、すべてのコンサートに乗るわけではない)、「いや、やはり目の前の演奏に集中しているのだ」とも感じたので、その時は別個のこととして考えるようにしていました。


 この解放記念コンサートの演奏は、カセットテープで持っていて、家にあった唯一の(災害時用にとってあった)ラジカセでかけて聴いてみると、ベートーヴェンの7番の冒頭ののびやかで華やかなオーボエの音は、やはりシェレンベルガー以外に考えられない。HMVを検索してみると、DVD付きCDが売られている。これは買うしかない、ということで年末にようやく納品となり、それ以来何度も繰り返し聴いています。


 DVDには途中で「ベルリンの壁」についての歴史についてまとめた短編のドキュメンタリーと、指揮とソリストを務め獅子奮迅の活躍だったダニエル・バレンボイムをはじめ、当時のコンサートマスターのゲラーマンなど、ベルリン・フィルの関係者のインタビューが収録されていて、なんと楽団員代表の一員として若き日のシェレンベルガーさんもインタビューに答えています。

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 この歴史的瞬間での興奮した空気の中で(あと、インタビュアーが、空気の読めない質問をしたこともあって)、冷静沈着なシェレンベルガーさんが、興奮を隠しきれないように早口でインタビューに答えていて、このコンサートの意義と、実現するために楽団メンバーたちも最善を尽くした様子が語られています。もちろん、演奏でもシェレンベルガーさんはオーボエ首席奏者として乗っています。

 後ろには東ベルリンから聴きに来た聴衆(このベルリン・フィルハーモニーは、東西ベルリンの境界近くに位置しており、統一が成った現在では文字通りベルリン市の中心にある)が映っていて、映像で見る東ベルリン市民の服装は着の身着のままのような感じ。壁が崩壊してたった3日後のこのコンサート、様々な混乱の最中での開催で、東ドイツ政府の機構・組織もまだ存在していた時期。つい昨日まで秘密警察が跋扈し、壁を超えようとすると最悪の場合、銃殺されていた時代。聴衆の中には東ドイツ政府に近い立場の人もいただろうし、逆に政府から弾圧される立場に居た人もいたでしょう。
 旧ソ連が崩壊していく過程では、開放路線を推進した当時のゴルバチョフ大統領が拘束されるクーデターが起こっています。当時の東ドイツでもそうした不穏な動きが起こっても不思議ではなかった。
 「もう少し落ち着いてから」という意見も当然に出たはず。しかし、ベルリン・フィルのメンバーは、バレンボイムとともに、この「解放記念コンサート」を開催を目指して東奔西走を続けた。このコンサートの様子が全世界に発信されれば、歴史の反動を抑え、「壁の無い平和なベルリン」の既成事実を固める意味合いもあったはず。


 前半のバレンボイムによるベートーヴェンの1番コンチェルトについての具体的な感想は、また別の機会に書こうと思いますが、前半のソリスト&指揮者としてバレンボイムが登場した場面、そして後半のタクトをもって再びバレンボイムが登場した場面でも、スタンディング・オベーション。そしてその拍手が鳴りやまないのですよ。

 バレンボイムがうなづいて何度も謝意を示しても鳴りやまない。オーケストラに向かって腕を上げてようやく静まりますが、興奮のるつぼともいうべき会場の異様な空気が映像からでも伝わってきます。


 後半のベートーヴェンの7番の演奏、FM放送を録音したテープで聴いているときには、その熱気あふれる演奏にただただ圧倒された感想しかなかったのですが、こうしてDVDで見てみると、ベルリン・フィルのメンバーたちが、こうした尋常ではない会場の空気にのまれることがなく、どっしりと構えた鉄壁の演奏を聴かせてくれます。シェレンベルガーも第1楽章の冒頭では、興奮する聴衆を慰撫するように、優しい人間的な音で聴き手を魅了します。

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 音は、やはりフルトヴェングラー~カラヤン時代の重厚で伝統的なスタイルのアンサンブルで、たいへんに聴き応えがあります。第2楽章の大河的なアプローチは、べルリン・フィルに限らず、現在のオーケストラでは聴けない世界観。


 第3楽章以降は楽団員たちの気分の昂揚が感じられると同時に、まったく崩れないテクニックと多彩な表現、隙の無いアンサンブル、細かいところまで神経の行き届いた演奏に圧倒されます。ベルリン・フィルの圧倒的なレベルを思い知らされます。

 しかし、第4楽章の後半になるとバレンボイムの興奮したタクトに呼応して、彼らも人の子、若干感情が抑えきれないとばかりに音楽が走りだします、しかし大きな乱れはなく怒涛の勢いでフィナーレを迎えます。

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 会場はブラボーが延々と続き、カメラが客席を抜くと、みな晴れやかな笑顔でスタンディングオベーションで歓迎する様子が見て取れます。壁が出来た後、「おらが街のオーケストラ」の一つであったはずの、ベルリン・フィルの演奏を聴けなくなった旧東ベルリン市民の興奮と歓迎がストレートに表れていて、あれから30年近くたった私(当時は中学生だった・・・)もジーンと来てしまいます。


 常に前を向いて前進するマエストロゆえ、岡山フィルとの共演の最中に89年の出来事が去来したわけではないかもしれませんが、彼の音楽家人生に深く刻まれた出来事であることは間違いないわけで、そうした経験と音楽性を持った方が、オーケストラのシェフとして、そのキャリアのすべてを注いでくださっている縁を、本当に貴重なことだと思うのです。

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岡山フィルハーモニック管弦楽団2018/19シーズンプログラム [岡山フィル]

 ようやく今年初めてのエントリーです。今更ですが・・・今年もよろしくお願いします。

 12月25日に「岡山フィルの2018/19シーズンプログラムの発表は?マイシートの発売は?」という記事をエントリーした翌週に、岡山フィル公式から来シーズンのプログラムが発表されていました。
 来シーズンもマイシートが発売され、今日が発売日。今回も、次年度引継制(次のシーズンも同じ席が自動的に予約される制度)の導入は無く、一から選びなおしになりました。来シーズンはこれまで確保してきたエリアから離れ、別の場所へ移動しました。
2018年5月27日(日)15:00開演  岡山シンフォニーホール
岡山フィルハーモニック管弦楽団第56回定期演奏会  ~心・踊る・ロシアの魂~
グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調
指揮/ハンスイェルク・シェレンベルガー
ヴァイオリン独奏/福田 廉之介
 
2018年10月14日(日)15:00開演 岡山シンフォニーホール
岡山フィルハーモニック管弦楽団第57回定期演奏会 ~シェレンベルガーのベートーヴェン交響曲シリーズ完結~
ベートーヴェン:レオノーレ序曲第3番
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調
ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調
指揮/ハンスイェルク・シェレンベルガー
ピアノ独奏/中桐 望
 
2018年12月9日(日)15:00開演 岡山シンフォニーホール
ベートーヴェン『第九』演奏会2018 ~巨匠 秋山 和慶 岡山フィル第九再登場~
ベートーヴェン交響曲第9番 ニ短調
指揮/秋山 和慶
ソリスト/オーディションにより選出(予定)
 
2019年1月20日(日)15:00開演 岡山シンフォニーホール
岡山フィルハーモニック管弦楽団第58回定期演奏会ニューイヤーコンサート ~新年の幕開けはロッシーニの名曲の数々とモーツァルトの傑作交響曲で~
ロッシーニ:歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
ロッシーニ:名曲アリア集
ロッシーニ:「絹のはしご」序曲
モーツァルト:交響曲 第41番「ジュピター」ハ長調
指揮/ハンスイェルク・シェレンベルガー
ソリスト/岡山にゆかりのある声楽家の方々
 
2019年3月10日(日)15:00開演 岡山シンフォニーホール
岡山フィルハーモニック管弦楽団第59回定期演奏会 ~シェレンベルガーのブラームス交響曲シリーズ進行中~
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
ウェーバー:ファゴット協奏曲ヘ長調
ブラームス:交響曲第4番ホ短調
指揮/ハンスイェルク・シェレンベルガー
ソリスト/グスターボ・ヌニェス(ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団首席ファゴット奏者)
 
 以前のエントリーでも触れた通り、来シーズンから主要10パートの首席奏者が就任するということで、岡山フィル本来の10型2管編成の楽曲で固めてきましたね。ソリストは4回の定期のうち3回が地元出身のソリスト・声楽を起用し、地域密着の姿勢を打ち出しています。
 あと、隠された狙いの一つに、「楽団とともに聴衆も育っていくように」との願いもこめられているように思います。
 今の聴衆層は、ベートーヴェンやドヴォルザークやチャイコフスキーなど、超メジャーな楽曲だと客足は安定していますが、超メジャーな曲を外すと(マーラーやR.シュトラウスといった後期ロマン派の人気演目でさえ)一気に客の入りが悪くなります。
 オーケストラの定期会員(マイシート)の醍醐味は、「自分は聴いた(食べた)ことが無いけれど、最高の素材(隠れた名曲)をシェフが腕によりをかけて料理したものを頂く」ことにある。
 オムライスやハンバーグ(超名曲)は確かに美味しいし、安心の選択肢ではあるけれど、せっかく地元に腕のいいコック集団(オーケストラ)が居るのだから、自分の知らないメニューに挑戦して、自分の知らなかった圧倒的な世界を味わってみたい!
 そう思う人が増えて、はじめて岡山のオーケストラ文化が育つ、ということになろうかと思います。
 来年度のプログラムは「岡フィルというお店のシェフと料理人の腕は確かですよ」という認知を拡大するための年になりそうです。店に対する信頼が出来てくると、毎回オムライスやハンバーグを頼むより、「シェフのおススメを頂こうか」という大人の楽しみ方もできるようになる。そのための仕込みの1年になりそうです。
 また、地元の風土が生んだ最高のワインたち(福田廉太郎さんや中桐望さん)が、ソムリエ(シェレンベルガー)のエスコートでどんな味わいを見せてくれるか、も楽しみです。
 1月定期は、今年と同じく地元声楽家による「オペラ・ニュー・イヤー。プログラム」を前半において、後半はモーツァルトの「ジュピター」交響曲。モーツァルトの後期交響曲は、シェレンベルガー氏の十八番でありながら、岡山フィルの首席指揮者就任後6年間封印されてきました。岡山フィルのアンサンブルが成熟するのを待って、ようやくその封印が解かれます。
  3月定期では前半にハイドン・ヴァリエーション、後半は交響曲第4番で、ブラームスの名曲を並べてきました。どちらもプロのオーケストラならば頻繁に弾かれるレパートリーですが、アンサンブル能力の高さが要求されます。新首席奏者陣のもと、どこまで成熟した演奏を聴かせられるか、シェレンベルガーの手腕に期待ですね。

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2017年に足を運んだコンサートのデータ [コンサート感想]

 これが2017年の最後のエントリーになります。今年足を運んだコンサートのデータをまとめてみました。

 足を運んだコンサートは29回、今年も秋から冬にかけて予定が狂ってしまい、30回の大台には乗りませんでしたが、この回数はブログをはじめた2006年以降、過去2番目に多かったです。
 来年4月以降、職場の体制が大きく変わるので、関西への計画的な遠征はほとんど出来なくなります(思い立って突然遠征することはあるかも知れません)。もし、身動きが取れる状況になってもコンサート遠征をセーブする方向性は変わらないでしょうね。大阪や京都へ往復すると1万円ぐらいかかりますが、回数を減らして浮いた遠征交通費を岡山フィルの賛助会員(1口1万円)の会費として納入することを検討しています。

 年間のチケット代総額は97,850円、1回あたり平均3,374円でした。

◎ジャンル別
 オーケストラ19回、室内楽8回、ピアノ・ソロ1回、吹奏楽1回
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◎オーケストラの楽団別
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岡山フィルハーモニック管弦楽団:6回
 日本センチュリー交響楽団:4回
 京都市交響楽団:3回
以下、1回
 ブリュッセル・フィル、タンペレ・フィル、アークティック・フィル、広島交響楽団、読売日本交響楽団
 アマチュアオケ:1回(岡山大学交響楽団)

◎指揮者別
 ハンスイェルク・シェレンベルガー:5回
 ドミトリー・シトコヴェツキー  :2回
 ジョン・アクセルロッド     :2回
 下野竜也            :2回
 以下、1回(おもな指揮者のみ)・・・ステファヌ・ドゥネーヴ、イジー・シュトルンツ、クリスティアン・リンドバーグ、サントゥ=マティアス・ロウヴァリ、飯森範親、大友直人、下野竜也、三ツ橋敬子、保科洋・秋山隆、丸谷明夫

◎ソリスト・アーティスト
2回:ドミトリー・シトコヴェツキー(Vn)、ハンスイェルク・シェレンベルガー(Ob)、松山冴花(Vn)、ウェン・シン=ヤン(Vc)

 以下、すべて1回(おもな奏者のみ)
 ミシェル・ダルベルト/ペーター・ヤブロンスキー/ピョートル・アンデルシェフスキ/モナ=飛鳥・オット/田部京子/津田裕也(Pf)、アレクサンドラ・スム/川久保賜紀/青木尚佳/守屋剛志/黒川侑/高畑壮平/近藤浩子(Vn)、ドミトリー・フェイギン(Vc)、クリスティアン・オイラー(Va)、村田和幸(Cb)、アンドレア・グリミネッリ(Fl)、シュテファン・ドール(Hr)、(Hp)、浜田理恵(S)、福原寿美枝(A)、松本薫平(T)、片桐直樹(B)

室内楽団体:カルテット・ベルリン=トゥキョウ、ザ・イマイ・ヴィオラ・カルテット、アンサンブル・ステラ、アンサンブル・レ・ペッシュ

◎プログラム曲目別
 プログラムにあがった曲(アンコールは含まず)の標準的な演奏時間を5分単位で指数化。作曲家別にまとめています。
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ちなみに・・・
 2014年は1位:ベートーヴェン、2位:バッハ、3位:チャイコフスキー、4位:ブラームス、5位:レスピーギ
 2015年は1位:ベートーヴェン、2位:ベルリオーズ、3位:モーツァルト、4位:シューベルト、5位ドヴォルザーク
 2016年は1位:ブラームス、2位:ハイドン、3位:ベートーヴェン、4位:モーツァルト、5位ショスタコーヴィチ

◎コンサートホール別
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◎会場の府県別
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◎会場の市町村別
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◎平成29年の印象に残ったコンサートは次の通り
(期間:2017/1~2017/12)

超SS級(まさに奇跡的な体験をしたコンサート)
2017/11/25 京都市交響楽団第618回定期演奏会(1日目) 指揮:下野達也 Pf:フェドロヴァ
2017/6/17 日本センチュリー響第217回定期演奏会(2日目) 指揮&Vn独奏:シトコヴェツキー
2017/2/11 クァルテット・ベルリン=トゥキョウ 2017岡山公演

SS級(物凄く感動したコンサート・・・年間ベストコンサート候補)
2017/12/10 2017/12/12 岡山フィル ベートーヴェン「第九」演奏会2017
2017/10/3 ピョートル・アンデルシェフスキ ピアノリサイタル 倉敷公演
2017/9/3 京都市交響楽団第616回定期演奏会(2日目) アクセルロッド指揮
2017/6/16 日本センチュリー響第217回定期演奏会(1日目) 指揮&Vn:シトコヴェツキー
2017/5/31 アンドレア・グリミネッリ フルートリサイタル
2017/3/25 岡山フィル第52回定期演奏会 シェレンベルガー指揮
2017/3/9  読売日本交響楽団第16回大阪定期演奏会 下野竜也 指揮 Vn:スム
2017/1/18 シェレンベルガー・セレクション ベスト・オブ・カルテット 

S級(非常に印象に残ったコンサート)
2017/10/8 岡山フィル第54回定期演奏会 シェレンベルガー指揮 Vn独奏:青木尚佳
2017/8/11 日本センチュリー交響楽団 いずみホール定期 No.36 ハイドンマラソン
2017/5/20 タンペレ・フィルハーモニー管弦楽団 2017 福山公演
2017/2/5 広島交響楽団第23回福山定期演奏会 指揮:大友直人 Vn:川久保賜紀
2017/1/15 岡山フィル第51回定期演奏会 指揮:シェレンベルガー Vc:ウェンシン・ヤン Vn:松山冴花

A級(たいへん良かったコンサート)
2017/12/12 シェレンベルガーのメリーX’mas 岡山大学Jホール
2017/9/2 京都市交響楽団第616回定期演奏会(1日目) アクセルロッド指揮
2017/9/1 カフェ・モンタージュ 田村安祐美・小峰航一・佐藤禎・塩見亮
2017/7/9 岡山フィル第53回定期演奏会 指揮:三ツ橋敬子 Hr独奏:ドール
2017/6/15 ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団 姫路公演
2017/3/18 倉敷のヴィルトゥオーゾ室内楽コンサートVol.2
2017/3/10 日本センチュリー響第215回定期(1日目) 指揮 :シュトルンツ Pf:ダルベルト

 今年も、拙ブログをお読みいただきありがとうございました。感謝申し上げます。


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過去1年の印象に残ったコンサート【自己紹介代わりに・・・】 [自己紹介]

 最近(過去1年間)聴きに行ったコンサートの中で、特に感動した・印象に残ったコンサートについて書いた感想をピックアップします。演奏の巧拙や周りの評価に関係なく、自分が感動したものだけをピックアップしています。自己紹介代わりになるかな。

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