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岡山フィル第52回定期演奏会 シェレンベルガー指揮 [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団第52回定期演奏会
~Ever! Beethoven~

ベートーヴェン/交響曲第6番ヘ長調「田園」
 ~ 休 憩 ~
ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調「運命」

指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ゲストコンサートマスター:戸澤哲夫

2017年3月25日 岡山シンフォニーホール

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 海外のオーケストラも含め、このホールで10回以上はベートーヴェンの交響曲第5番を聴いていると思いますが、その中でも最も聴き応えのある演奏でした。会場は90%近くは埋まる満員の中でのコンサート、客席も大変な熱気の中で、これほどプロの奏者が夢中になってベートーヴェンを演奏すると、こういう演奏になるのか、というほど情熱のほとばしる様な演奏でした。
 かといって熱気で押し切った演奏では決してなく、しっかりとした低音の基礎の上に充実した中音域(いや~、この日のヴィオラ、チェロの響きは、国内の他の常設オーケストラに肩を並べるような厚みがあった)、その上にしっかりと乗って旋律をけん引する高音、がっちりとしたマッチョなピラミッド型のハーモニーが徹頭徹尾効かれた。シェレンベルガーが理想とする音に、徐々に近づいているのではないでしょうか。
 田園では第1楽章終結部でがっかりするような場面があったものの、そのミスが音楽全体に波及しないのは流石。第3~第5楽章に向けてのハイテンポな疾風怒濤の展開にもよく楽団員がついて行ったと思います。

(以下、5月3日に更新)

 私の感想の前に、演奏会の5日後には岡山フィルから動画がアップされています。徹頭徹尾、熱のこもった、ベートーヴェンらしいピラミッド型の堅牢なサウンドを楽しんでください。
 モニターマイクのみで録られているため、ティンパニの音が強く、バランスが悪いと感じられるかもしれませんが、会場で聴いた音楽は非常によくまとまっていました。

 編成は(見たらわかる!?)1stVn12→2ndVn10→Va8→Vc6、上手奥にCb6本の、再低音補強型の2管編成でした。
 会場の空気は、前回1月の定期演奏会後の興奮した空気がまだ残っているかのよう。やはりオーケストラの定期演奏会は2か月に1回ぐらいは開催して欲しい。そして、今回はベートーヴェンの5,6番で、今年は10月に7,2番。12月に9番のコンサートを控えている。実質的にはシェレンベルガーと岡山フィルのベートーヴェン交響曲ツィクルス中間地点であり、聴衆もそのことをよく理解しているような昂ぶった空気だった。
 シェレンベルガーのこれまでのコンサートでの配置は、チェロをアウト(舞台側)、ヴィオラをイン(舞台の奥)という配置を取っている。かつてシェレンベルガーが所属したカラヤン時代のベルリン・フィルも、この配置が多かった記憶があるが、動画を検索してみるとヴィオラをアウトに配置する動画も結構見られる。現在ラトルのベルリン・フィルは、古典派はほぼ対向配置。ロマン派以降はヴィオラがアウトに配置する。
 いつかは、この配置を採る理由をシェレンベルガーさんに聞いてみたいと思う。
 1曲目の交響曲第6番「田園」は、全体的に快速テンポで進んだ。これ以上早くてもこれ以上遅くてもだめ。まさに田舎に着いた時の愉快な気分を表すテンポだった。
 シェレンベルガーのベートーヴェンを聴くのは4回目になるが、彼が棒を振るだけで、まさにベートーヴェンの音楽がホールに広がる。ベートーヴェンの音楽って何?と聞かれると答えに窮するのだが、私が子供のころからCDで親しんだカラヤン&ベルリン・フィルとの3つの全集(しかも3回目はシェレンベルガーのオーボエも聴こえる)、あるいはブロムシュテット&ドレスデン・シュターツカペレや、クーベリック&バイエルン放送交響楽団。これらの演奏と確実に「地続き」の音楽である、という確信が得られる演奏なのだ。
 そして改めて思ったのは、やはりシェレンベルガーのベートーヴェン演奏の重要な要素は、以前にも書いた通り、ベートーヴェンの『鼓動』であり、そしてベートーヴェンが感じていた『風と空気』だ。弦の刻み一つ一つからベートーヴェンの頬を撫でていたであろう、風が感じられた。

 前回の定期演奏会では、弦楽器奏者の何人かから(特に弱音部での)音の質感を害する音が聴こえて来て、奮起を期待する感想を書いたが、今回はよく弾き込まれていたのだろうと思う。全員が同じ質感の音を聴かせてくれ、大いに面目を回復した。
 ただし、第1楽章終結部でヴァイオリンの一部の奏者がずれた。恐らく一人の奏者のミスだったものが何人かに波及したのだろう。第1楽章の「収め」の重要な場面だけに看過できないミスだった。
 
 第3楽章から第4楽章、そして第5楽章へのアタッカで突き進む3つの楽章は圧巻だった。第4楽章はティンパニの切れ味が抜群。いやもう、あれは雷の音にしか聞こえなかった。渡邉さんのティンパニストとしての凄さを改めて感じた。
 第1楽章も(ヴァイオリンに一瞬の緩みがあったものの)弦5部も、本当に見事な演奏だった。シェレンベルガー&岡フィルの真骨頂は仕事の丁寧さと、どんな名曲プログラムでも全力で演奏すること。「田園」なんて、主要オーケストラだったら目をつぶってでも演奏できるでしょうが、岡フィルにとっては年間120にのぼる演奏会のうちのたった4回の定期演奏会の晴れ舞台。このモチベーションの高さは得難いと思う。
 第5楽章での、滴り落ちるような瑞々しさと言ったら・・・、岡山フィルが「上手くなった」というよりは「いい『音』を手に入れた」、そう実感した瑞々しい演奏だった。

 休憩時間に思ったこと。このホールは3月~5月ぐらいが、特に音がいい。空調完備の現代のホールとは言え、観客が頻繁に出入りするし、観客自身の服装などでも音は影響される。このシーズンは異常乾燥注意報などが頻繁に出されるほど、岡山は乾燥する季節。火事が多発するなど大変な時期ではあるのだが、ことオーケストラ音楽という点においては、楽器の持つ本来の響き遺憾なく発揮できる時期なんでしょうね。

 休憩後は交響曲第5番。結論から言うと、シェレンベルガーの楽曲の構築力を存分に堪能した演奏だった。冒頭の音型は「単なる提示部」であり、それを繰り返すことによって徐々に高揚感を高めていく。展開部に入ってさらにギアを挙げ、オーボエの悲しげなメロディで独特の緊張感を演出、最後の3分間に第1楽章のピークを持って来る。だから、最初の4つの音を聴いた時は、若干肩透かしを食らった感じがあったが、最後には唸るしかない構築感で聴かせてくれた。竜頭蛇尾な演奏になりがちなこの曲を、見事に料理。
 それに加えて、岡フィルのサウンドがなんといっても素晴らしかった!いや、本当に凄いサウンドを奏でるオーケストラになったなあ・・・というのが心からの感想。シェレンベルガーの導きによるところが大きいのだろうけれど、各奏者も幼少のころから研鑽を積み上げ、音楽大学ではエリートコースを歩み、海外での修行も経験した人がほとんど。そんな彼らの一人一人の才能・潜在能力が結集して、今のサウンドを作り上げている。岡山の大いなる財産、といっていいでしょう。

 個別に印象に残ったところを記録しておくと、まずはホルン!前半の「田園」もそうだったのだが、ホルンの笠松さんが、とにかく凄い、表現のパレットの多彩さと、強奏する場面での音の圧力と輝かしさには本当に惚れ惚れする。特別客演首席として、定期演奏会だけでも登場して欲しいと思う。
 ティンパニも田園に引き続き素晴らしかった。第3楽章~第4楽章にかけて、シェレンベルガーは要所要所で弦のアクセントを強調しつつソリッドに、管のアクセントも強調し、そしてティンパニをかなり強めに叩かせて、轟音ともいえる壮麗な響きをホール一杯に響かせる。それもこれも渡邉さんのティンパニあっての解釈だった。そんな壮大な響きのなかでも、チェロバスの低音のアクセントを強めに走りに走らせ、カラヤンのような油絵の具を塗りこめるようなサウンドではなく、瞬発力と見通しの良さを持った絶妙のサウンドを作り上げていた。
 第5番は指定された繰り返しはすべて実施。

 動画を見ると、ティンパニの音を拾い過ぎて、音が割れ気味になっています(笑)それでもこの日の演奏の物凄いサウンドの片鱗は感じられます。とくにここの音階上昇から16ビートの激しいモチーフで高揚していく場面が好き。
 この2曲だけでも大変な満足感があったのだが、アンコールにモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲まで演奏するサービスっぷり。シェレンベルガーって音楽に対して極めて実直で誠実なんだけれども、サービス精神も旺盛なんですよね。この日は弦楽器トップ4人の弦楽四重奏のプレコンサートもありましたし、その上シェレンベルガーのプレ・トークもありました。やれること・打てる手はすべて打って行く感じです。足を運んだ聴衆は120%、満足して帰路についたのではないでしょうか。
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 終演後は頭がカッと熱くなるほど余韻が物凄くて、帰りに嫁さんと表町の喫茶店でゆっくりしたんですが、同じように終演後に商店街へ足を運ぶ人が多かったですね。今回は土曜日公演だったんですが、日曜日公演よりもゆっくりとした時間を過ごされる人が多かった印象があります。今の岡山市は、岡山フィルを中心市街地の活性化の起爆剤の一つに位置づけているようですが、これが2か月に1回のペースで行われれば、かなりの波及効果があるように思います。
 今年は7、10,12月へとシェレンベルガー&岡山フィルのドイツ音楽の系譜は引き継がれていきます。もちろんすべて足を運ぶつもりです。

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