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バーミンガム市交響楽団2016 倉敷公演 山田和樹指揮 [コンサート感想]

第99回くらしきコンサート バーミンガム市交響楽団2016 倉敷公演

ベートーヴェン/「エグモント」序曲
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番ニ短調
 ~ 休憩 ~
ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調

指揮:山田和樹
ピアノ独奏:河村尚子

2016年6月23日 倉敷市民会館

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 バーミンガム市交響楽団、ラトルが育て、現在はネルソンスが率いる名門オーケストラ。僕は、英国のオケのステレオタイプなイメージと、ラトル時代のEMIのイギリス作曲家の録音の印象から、「さぞかし、パワフルな管楽器の音が聴けるのだろうなぁ」と思っていたら、やっぱり実演を聴かなきゃわからないですね。管楽器よりも弦楽器部隊の非常に濃密な音が強く印象に残りました。管楽器は確かにパワフルやけど、逆にもう少しデリカシーが欲しい感じ。細かいミスも多かった印象。

 しかし、繰り返しますが、この弦楽器の音は強力ですねぇ。コントラバス二本を増強してたとはいえアンサンブルの分厚さはもちろんのこと、フレージングの呼吸の深さが印象的。だから、トゥッティの時には音がうねるうねる!
 ベートーヴェンの7番の第4楽章は、デッドな音響と広大な容積のある倉敷市民会館が、これ以上鳴らしたら音が割れちゃうんじゃ…というところまで物凄く鳴っていました。そして何よりも音楽的で溌剌とした演奏は魅了されますね。これもステレオタイプな思い込みですが、あのベートーヴェンのビートに効かせ方は、まさにロックの国の演奏じゃないかと思ってしまいます。
 今日はツアー初日でしたから、管楽器の方も調子が出てきたら、ツアー中盤以降はもう凄い演奏になるんじゃないか?

 しかし、今日のハイライトは、ラフマニノフのピアノ協奏曲だったかもしれない。
 曲の冒頭、事前のリハーサルの通りだったんでしょうが、オーケストラが音を抑さえることがなく、その「うねる」ものすごい音に河村さんのピアノが埋没しかかっていた。しかししかし!第1楽章の中盤に差し掛かると、途中から河村さんの強力な打鍵と、伸びのある音がどんどん客席に迫って来て、第3楽章では「すごい演奏を聴いてるよな、今」と感動の余りに目頭が熱くなりました。迫力の場面以外にもカデンツァでの粒の前の立ったアルペジオも素晴らしく聴かせるものでした。

DSC_0310.JPG

美観地区の本町の通り。開演50分前でも団員さんと思しき女性4人組がTシャツ姿のラフな格好で散策していました。

以下、細かい感想メモです

・14-12-10-8-8の14型ストコフスキー(ステレオ)配置、チェロが上手アウト、コントラバスは上手のチェロの後ろ。ラフマニノフが3管編成、ベートーヴェンが2管編成。ベートーヴェンの7番では、バロックティンパニに入れ替え(マレットはフェルト付きで、完全なピリオド系サウンドではなかった)。

「エグモント」序曲
・この曲から弦楽器の濃厚な響きは快調でした。1曲目の序曲なのに、山田さん、なかなか力の入ったタクトです。カーテンコールが起きましたが、時間の進行を気にしてか、山田さんは出てこられませんでした。そうなんです、今日のプログラムはなかなか盛りだくさんなのでした。

ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番
・なんだか久しぶりにこの曲を聴いた気がします。CDだとだいたい第2番とカップリングされていて、この第2番はコンサートでも頻繁にかかる曲のため、若干食傷気味で家ではほとんど聞かない。その道連れ・・・と言ったらなんですが、この3番もほとんど聴いていませんでした。

・改めて聴いてみて、この曲も本当に名曲ですよねぇ。協奏曲で涙するってことはほとんどない自分が、第3楽章の途中から目頭が熱くなって本当に困りましたもの。それはひとえに「伴奏」の枠を超えて熱演を繰り広げたオーケストラのうねりと、それに真っ向から対抗した河村さんのピアニズムに涙腺を刺激されたからだと思う。

・河村さん、パワフルな演奏が持ち味の一つでもありますが、ピアノ・ピアニッシモの表現の繊細さも今回際立って良かったです。第1楽章のカデンツァで、咳一つない緊張感で会場を支配していました。カデンツァの終わりで第1楽章の主題が戻ってくるところのオケとの息も絶妙で、ここでまず感極まりそうになった。

・第2楽章はラフマニノフの甘く切ない旋律に、粒の立ったキラキラした河村さんのピアノの音が絡む。それは絶妙のバランスでした。

・第3楽章は超絶技巧の連続、河村さんとヤマカズさんは、取り立ててあおる事も大袈裟に間をおく事も無く、きわめて正攻法でこの楽章を攻め込みます。この楽章は古今のピアノ協奏曲の中でも、オーケストラとの「協奏」では最高傑作なのではないかと思います。そう思わせるものが河村さんのピアノにはあったと言う事です。

・残響の少ない倉敷市民会館で、ピアノ演奏するのは大変なんですよ。僕は2階席の上段(ほぼ毎度の定位置)に座っていたんですが、あのツイメルマンでも音が充分に飛んで来なかったり不満を感じる演奏があった。それを全く不足のない音量と解像度で鳴らしきった。年齢的にもこれから最も油の乗った時期に差し掛かるんでしょうね。河村さんから目が離せません。

・あれだけの力演のあとに、なんとソリストアンコールがあった。ラフマニノフのエチュード、作品33-8。しみじみとした曲でクールダウンできました。

ベートーヴェン/交響曲第7番
・後半のベートーヴェンの7番は、全体的にはやや「勢いに任せた」感じはあったものの。
木管の合いの手や第1楽章終結部へ向かう場面の盛り上げ方・持って行き方など、山田さんのアイデアあふれる演奏でした。

・第2楽章へはアタッカで突入。必要以上に暗い雰囲気にせず、力強さを強調した演奏でした。

・第3楽章は14型のオーケストラなのに、パート間のコミニュケーションがものすごく豊富。奏者の皆さん、「パパパ・・・・」と口づさみながら、眉を動かしながら、体も動かしながら、めいめいが紀に乗って演奏しているのが分かる。こういうの、日本のオーケストラはもっとやってほしいなあ(でも広響さんとかは、けっこうこんなノリかも)。

・第4楽章は文句なしの大団円。チェロバスが音を引っ張りながらヴァイオリンとやり取りする部分の、音の分厚さがハンパねぇ~!

・リズム的には、裏拍をガツンと強調してましたね。こりゃー何度も書きますが、ロックですね。最後のシーンではティンパニが結構拍を追い込み気味に取って、他のパートもそれに負けじと、でもみんな口元が笑いながら演奏しているし(笑)こりゃ凄い7番でした。

・山田さんは、本来このオーケストラにポストを持っているわけではなく、地元の定期演奏会に登場し、その流れでの日本ツアーだったとはいえ、「日本ツアーだから、日本人指揮者なんかい!」という雰囲気がオケの中から生まれたとしても不思議ではない。最近はあんまり見かけなくなりましたが、昔はそういうツアー、多かったですよね。それにも関らず、指揮者とオーケストラの関係はすこぶる良好のようで(で、ないと、ああいった突っ込んだ共同作業は出来ないでしょう)、楽団を掌握出来ている。「ヤマダとなら、面白い事が出来る」という雰囲気が明らかに感じられるんです。いやはや、今後がますます楽しみになりますね。

・アンコール曲はウォルトンの「ヘンリー5世」より「彼女の唇に触れて別れなん」という曲。こういう選曲は山田さん、本当にセンスがいいですね。スイス・ロマンド管の時はシュレーカーのマドリガルでした。あれも良かった。


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コメント 2

サンフランシスコ人

10/27 山田 和樹のCDが、ニューヨークの放送局で流れたみたいですね...

http://www.wqxr.org/#!/musicians/kazuki-yamada/
by サンフランシスコ人 (2016-10-29 07:57) 

サンフランシスコ人

来年、山田 和樹がユタ交響楽団に再度登場...

Nielsen: Helios Overture
Grieg: Piano Concerto
Sibelius: Symphony No 2

http://my.usuo.org/single/EventDetail.aspx?p=18127
by サンフランシスコ人 (2017-02-22 02:10) 

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