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岡山フィル第47回定期演奏会 with アンサンブル・ウィーン=ベルリン [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団第47回定期演奏会 

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指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー 
共演:アンサンブル・ウィーン=ベルリン
コンサートマスター:戸澤哲夫

モーツァルト/フルート協奏曲第1番 K.313
       フルート独奏:カール=ハインツ・シュッツ
   〃  /オーボエ協奏曲 K.314
       オーボエ独奏:クレメンス・ホラーク
リヒャルト・シュトラウス/ホルン協奏曲第1番 Op.11
       ホルン独奏:シュテファン・ドール
   〃  /クラリネットとファゴットのための二重協奏曲 AV.147
       クラリネット:アンドレアス・オッテンザマー、ファゴット:リヒャルト・ガラー
モーツァルト/協奏交響曲 K.297b
         オーボエ:クレメンス・ホラーク、クラリネット:アンドレアス・オッテンザマー、
       ファゴット:リヒャルト・ガラー 、ホルン:シュテファン・ドール

2015年7月4日 岡山シンフォニーホール

 今日、会場で聴かれた方なら、まずは『シュテファン・ドールのホルンが!』というに違いなく、事実、シュテファン・ドールのホルンは強烈なインパクトを残し、会場のボルテージがあそこで最高潮に達したことがそれを表していると思いますが、岡山フィルのファンである僕が、まず言いたいのは。
『岡フィルの皆さん、よく頑張ってくれました。本当にありがとう!シェレンベルガーさん!あなたは岡山の音楽史をまた塗り替えられました、本当に本当にありがとう!』それをまずは伝えたい気持ちです。

 今日は、関西でいつもコンサート後の感想を共有させていただいている、大切な方を岡山までお誘いしていたのです。しかし今日の昼になって、「岡山フィルはいい演奏をしてくれるだろうか?あの強烈なソリスト陣の足を引っ張ってしまわないだろうか」とか、岡山フィルのここ数年の躍進ぶりを僕は確信していた筈なのに「岡目八目というし、耳の肥えた方が聴いたら、わざわざ岡山までご足労いただいたのに、それにふさわしい演奏になるだろうか?」と、自分が演奏するわけでもないのに、なんだか非常に緊張しておりました。
 確かに1曲目のモーツァルトのフルート協奏曲1番の第1楽章は、かなり固さの目だった演奏で(いやあ、楽団員さんも緊張してたんでしょうかねぇ)アンサンブルの統一感も乏しく、「どうしちゃったの?」とシェレンベルガー氏の就任以後、最大のピンチの状態・・・。しかし第2楽章に入ると、「ああ、これは今の岡山フィルなら修正してくる」という確信が芽生え、2曲目に入ってモーツァルトのオーボエ協奏曲で完全に挽回。3曲目のR.シュトラウスのホルン協奏曲では完全にシェレンベルガー&岡フィルのサウンドを見せてくれた。
 後半プログラムは本当に安定の演奏で、終演後には大切な友人の方から「本当にいいオーケストラ。岡山まで聴きに来て本当に良かった。オーケストラを取り巻く状況は厳しいとは思いますが、相当な年月をかけて育ててこられたサウンドだと思う。シュトラウス2曲の演奏は見事な演奏だった」との感想を聞いて、わが事のように嬉しくなりました。
 協奏曲5曲、という独特の緊張感の中で見事な演奏で締めくくった岡山フィルに拍手!です。

(7月5日追記)
 古今東西・空前絶後の超豪華共演。アンサンブル・W=Bメンバーの一人呼ぶだけでも充分なプログラムが組めるのに、この銀河系軍団5人と同時に共演する。15時に始まったこのコンサート、終演時間は17時25分。アンコールまでやってくれた。終わってみればあっという間の夢ような濃厚で濃密な時間でした。
 チケットは完売とはいかなかったようですが、1~2階席は見渡す限り満員です。今回の聴衆は若い方が本当に多い。自ら楽器を演奏し、どうしても聴いておきたいという人が多かったんでしょう。
 編成は10型の2管編成。岡山フィルとしては最も「岡山フィルの音」がするサイズです。
 冒頭にも書きましたが、1曲目は伴奏がなかなかしっくり来ず、そちらの方が気になってしまい、第1楽章のカデンツアまでシュッツさんのフルートをじっくり楽しむという感じになれなかったんですが、カデンツアでこちらの目が覚めました。音色が鳴るたびに空気が浄化されていくような澄み渡った音。オーケストラとの掛け合いの場面ではソリストの位置から後ずさりして、オケを乗せていって。そのスマートなステージマナーが、オーケストラの緊張を解きほぐし、ガラッと雰囲気を変えていく。
 シュッツさんは、自分の出番が無い時でも、客席にはいってメンバーと岡フィルの演奏を、本当に楽しそうに聴いている。その姿に私の相方なんかはすっかりファンになってしまった様子でした。
 2曲目のモーツァルトのオーボエ協奏曲。シェレンベルガーとの初共演の時のプログラムでもありました。シュッツさんの魔法にかかって息を吹き返したオーケストラは岡フィルらしい温かみのあるサウンドによる伴奏でサポート。
 ぱっと見では分からないんですが、もしかしてあれが『ウィンナー・オーボエ』の音色でしょうか?不勉強な僕は、はじめは音量に物足りなさを感じていたんですよ。でもじっくり聞いていくうちにローター・コッホ厚めの音が主流になる前の、伝統的な芦笛をルーツに持つオーボエらしい音に魅了されます。60年代前半ぐらいまでの録音を聴くと、ウィーン・フィルに限らず、どこのオーケストラもこういうオーボエの音なんですよね。リードの微細な振動が伝わってくるような非常に繊細な音色。正規メンバーのジョナサン・ケリーの来日中止は残念ですが、ウィーン流の音色を堪能出来たのは、まさに僥倖。ホラークさん、よくぞ岡山に来てくださいました。
 前半の最後はR.シュトラウスのホルン協奏曲。世界一のホルニストである、シュテファン・ドールが3つの音を発した瞬間。会場の空気が一変。何という厚み、何という奥行、何という圧倒的な響き!いや、もう音が凄過ぎて、呆然・唖然という感じです。梅雨の岡山の蒸し暑い空気を、アルプス山麓の空気に一変させた!これは大袈裟じゃなくて、会場にいた人なら分かって下さるだろう。
 そして岡フィルの演奏がたいへん推進力とハリのある音を聞かせて、南独のどこかのオーケストラが演奏しているような、颯爽とした響きをホール隅々まで響かせていたことがうれしい。
 返す返すもドールのホルン、凄いものを聴いてしまいました。ホルンというのは、オーケストラの楽器の中でも最も演奏困難な楽器と言われているにも関わらず、「こんな音も出るのか」「こんなに泣けるのか」 ああ、なんという幸せな時間。
 前2曲では慎重に見えたシェレンベルガーのタクトが躍動し、オーケストラと一体となる。これぞ新・岡フィルサウンドや!
 後半1曲目のクラリネットとファッゴットの二重協奏曲。家でCDで聴いているだけでは、甘いフレーズが微妙に変化しながら複雑に絡み合って、とりとめもない・なんだか掴みどころのない曲。という印象しか残らないんですが、生演奏で聴くとこういう曲やったんや!という腑に落ちる感じがたまらない。
 ロマン派の落日の真赤に染まった夕日が沈んでいくのを眺めているような、なんとも言えない雰囲気のなかで掛け合うクラリネットとファゴット。特に、第2楽章のファゴットの安らかなソロの中、天使が降りてくるようなクラリネット、そこに絡んでくるコンマスのソロ・・・・。たまらんですね。
 オッテンザマー、ガラーの二人の超絶技巧に酔いしれ、甘い甘い世界に溺れていく感じ。同じR.シュトラウスの「23の独創弦楽器のためのメタモルフォーゼン」と同じ雰囲気を湛えています。このつかみどころのない感じが、まさに変容(Metamorphosen)なんでしょうね。
 最後は、モーツァルト(一部ではモーツァルトではないのでは?との研究もあるようですが)の協奏交響曲。既に2時間を超えようとしていましたが、オーケストラはこの奇跡の共演の名残を惜しむように、見事な集中力の演奏で応える。
 このステージ上で繰り広げられている奇蹟を目の前にすると、『地方創生』『地方発グローバル』という言葉がチンケでペラペラなスローガンに感じてしまう。だって、人類の至宝と言える木管奏者たちと、輝かしいキャリアのすべてを岡山の聴衆のために注いでくれるシェレンベルガーの両者は新自由主義的な「グローバル」という言葉とは対極的な雰囲気を纏って、20年間草の根の雌伏の時を経て勇躍著しい我が町のオーケストラ:岡山フィルのメンバーと音楽によってフラットに深く結ばれ、それを見守る聴衆の一人として自分が居る。
 これほど創造的な場面を、岡山で僕は見たことが無いです。これまで様々な指揮者(今日の岡フィルのサウンドから、小泉和裕・飯守泰次郎といった、岡山フィルに尽力した指揮者たちが残したものを聴くことが出来た思い)と共演し、客席が半分にも満たなかったり、1年近く定期演奏会が開かれなかったり、多くの苦難があり、今なお資金難と常設化出来ない苦難を抱えながらも、20年間なんとか続けて来たからこそ、この日が来た!言い知れぬ感動が襲ってきた時間でした。むろん、演奏も見事!
 アンコールで披露した、スラヴ舞曲の超絶技巧高速パッセージ連射の5人の共演、うっとりするような音色で繰り出す超絶技巧に再び唖然・呆然。20人ぐらいブラボーを叫んだんじゃないでしょうか。
 今回のアンサンブル・W=Bの来日公演では、オーケストラとの共演が2回組まれている。すみだトリフォニーでの新日本フィルとの共演と、ここ岡山での岡フィルとの共演。しかしプログラムが違う。東京はすべてモーツァルトの協奏曲であるのに対し、岡山ではR.シュトラウス2曲の上に、最後は協奏交響曲K.297bまで入る。どちらに力が入っているかは一目瞭然でしょう。
 シェレンベルガーさんが岡山フィルの首席指揮者に就任してくれなかったらあり得なかった岡山音楽会史上に残るイベント。岡山市は秋の岡山国際音楽祭をこっちにズラして音楽祭のフィナーレにしてもいいぐらいです。せめて『音楽祭特別公演』ぐらい銘打って大々的にアピールすべきだったでしょう。岡山市役所のこういう文化・芸術に対する不感症っぷりにはがっかりさせられます。
 他の街でマラソンが流行ったら10番煎じぐらいの「岡山マラソン」をやり、「地方創生」と銘打ってプレミアム商品券を配る。もうこんなことやめませんか?岡山フィルの20年以上の地道な軌跡が、今日の奇蹟を生んだように、積み重ねこそが力になる。この日、70万人の岡山市民のうちの2000人もの人がこの空間を共有したことで、少しづつですが変化があることを祈りたいです。
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 それはさておき。次回の定期はブラームス・プログラムです。恐らくシェレンベルガー氏は岡山フィルでブラームス・チクルスを最後までやり通すつもりでしょう。次回も全身全霊を掛けた演奏になります。再び満席で迎えようではありませんか。

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ぐすたふ

当日は有難うございました。お誘いいただいたことを、心から感謝いたします。実は、私もこれまで聴いたことがない岡山フィルがいかなるものか、やや緊張しつつ演奏会に臨んだのですが(笑)、いやいや、素敵な演奏会で楽しみました。

会場の雰囲気も良く、高校生もたくさん来ていて、聴衆が育っているなあ、という感じがしました。拍手の立ち上がりかたも、感動が素直に出た温かいもので、フライイング気味に拍手がはいるわ、演奏が終わるや否や潮が引くように席を立つわの京都の聴衆よりもずっと良かったです。

キャパも充分で響きもいいホールがあるわけですし、奏者と聴衆が互いに良い関係を作って行かれれば、素敵な音楽が出来ると思います。また機会があれば、ご一緒させていただければ幸甚です。
by ぐすたふ (2015-07-05 22:30) 

ヒロノミンV

>ぐすたふさん
 こちらこそ、当日はご一緒できて感謝です。
 シェレンベルガーさんの首席指揮者就任以後、岡山フィルの躍進は目覚ましく、ぐすたふさんにはぜひお聴き頂き、ご感想を伺いたいと思っていました。最高の形でご案内することが出来、そしてそのあとの食事と酒の旨いこと旨いこと!(私はあまり飲めませんが、でも酔いしれました)。

>拍手の立ち上がりかたも、感動が素直に出た温かいもので・・・
 私も含め聴衆も、オーケストラのメンバーも、年間わずか3,4回しか無い岡山フィルの定期演奏会は、特別な時間なのだと思います。シェレンベルガーさんもそうした聴衆の雰囲気をとても気に入ってくださっているようです。
https://www.youtube.com/watch?v=j_eGmx8IAZU
 今のいい雰囲気を大事にしつつも、京都や大阪のように、もっと日常的に気軽に、毎月のようにこういった演奏会が聴けるようになることを願っています。 

by ヒロノミンV (2015-07-05 23:16) 

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