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パリ管弦楽団 倉敷公演 パーヴォ・ヤルヴィ指揮 [コンサート感想]

 一つ前のエントリーに追記するつもりでしたが、新しいエントリーとして起こし直しました。
 
 フランスのオーケストラってなかなか地方都市には来てくれないものです。しかもパリ管が来てくれるというのですから、非常に楽しみにしていました。
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パリ管弦楽団 2013 倉敷公演
 
シベリウス/組曲「カレリア」
リスト/ピアノ協奏曲第2番 ※
サン=サーンス/交響曲第3番『オルガン付き』 ☆
 
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ピアノ独奏:ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ※
オルガン:ティエリー・エスケシュ ☆
 
2013年11月9日 倉敷市民会館
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 先日購入したレンズスタイルカメラを持って、ホールへの道すがら撮影。

 コンサートに行くからには、やはり名演奏に出会いたい。だから事前にあらゆる手段を講じて情報を集める。来日オーケストラ公演はチケット代が張るので、一層リサーチに力が入る。そして自分が描いたシナリオ通りに名演奏に出会えた時には、大いに満足する。
 しかし、自分が本当に期待しているのは『予想外』『想定外』の事なのだと思う。自分の予想したシナリオなにもかもを凌駕する。『こんな演奏、予想していなかった!』と驚嘆に震える瞬間、そんな体験を自分は心の底から欲しているのだと。
 
 このパリ管弦楽団の倉敷公演が、まさにそんな自分の予想をはるかに凌駕し、驚嘆に震える瞬間になりました。今となっては本当に失礼なことながら、実はここまでのパフォーマンスが聴けるとは思っていなかったのです。
 しかし、実際の演奏を聴いてはっきりと感じたことは、ベルリン・フィルやウィーン・フィル、あるいはRCOといった超一流の楽団に全くひけを取ることがない、最高峰の技術、最高のパフォーマンスだったということ。そして何よりも千変万化するその音色、音の質感・ボリューム。これは世界のどこのオーケストラをもってしても、これほど多彩な音を聴くことは出来ないと思う。
 何より僕が一番印象に残っているのが、楽団員さんたちが本当に真摯・かつ音楽を楽しんでいるということ。その楽団員を前に、パーヴォ・ヤルヴィがオケの中で生まれて来るインスピレーションを大事に、いや、もっと増幅してスケールの大きい世界を描いていくということ。そして、その音楽の中に身を置くと、本当に心地よい・エキサイティングだけど心にしみわたる幸福感というか・・・「生きてりゃ、こんな音楽に触れることもできる」、おおげさじゃなくそう思いました。
 
 客席はほぼ満席。編成は16型の2管編成通常配置です。

 1曲目はシベリウスのカレリア組曲。北欧の曲を降らせれば間違いなく第1人者であるネーメ・ヤルヴィ氏を父に持つだけあって、さすがに堂に入ったタクトでした。そこにパリ管の千変万化するハーモニー。次のリストの協奏曲もそうですが、並のオケが演奏したら、ズンチャ、ズンチャと野暮ったいリズムになってしまいかねない曲だと思うのですが、爽快でリズミカルで気品すら感じさせるのはさすがというところ。
 
 2曲目のリストのピアノ協奏曲第2番。自分の予想が覆った、落差という意味ではこの曲が白眉でした。甘く切ないメロディーが散りばめられているけれど、オーケストレーションがズンドコ節というか・・・・正直、積極的に鑑賞したい曲ではなかったのです。
 
 ソリストはジャン=フレデリック・ヌーブルジェ。実はこのピアニストを聴くのは3度目。1度目はリヨン管弦楽団とラヴェルのピアノ協奏曲ト長調を演奏、その時は『若いのに、まるでベテランのように落ち着いた、音の粒の立った、かつ柔らかい音を出す、いいピアニストだ』と感じていました。
 2度目は大フィルとの共演。モーツァルトの18番。彼にとって不幸だったのは、後半がもはや歴史的事件とも言える、大植英次指揮の96分もの超スローテンポのマーラー5番、その印象が強すぎて。もはやどんな演奏だったか全く覚えていないのです。
 
 今回聴いて、改めて音のきらめきというか、陽光に照らされてキラキラ光る水面のような、魅力のある音の持ち主だと再認識しましたが、今回は組んだ相手も凄かった! 
 パリ管の伴奏、とにかく個々の奏者の能力が高いのです。チェロと第1ヴァイオリンのコンマス&フォアシュピーラーとピアノが絡んで、室内楽的に聴かせる場面があるんですが、ここが本当に良かったですねぇ(しみじみ~)。
 合奏部分でも、第1部~第2部での短いフレーズをが繰り返し出て来る場面での、弦の深いボウイングから繰り出される音の波状攻撃。ヤルヴィの切れ味鋭いタクトとオケの合奏力の高さに圧倒されました。この曲の持つラプソディー的な面にスポットが当てられ、パリ管とヤルヴィの美学が感じられました。
 木管奏者も絶品。ピッチの正確さ以上に音色の多彩さに唖然としてしまうほどです。そしてそして、触れなければならないのはホルン!このホルンの音が物凄く聴いていて気持ちいいのです。あと、忘れてならないのはパーカッション、特にティンパニ。彼の流麗かつ大胆な演奏に魅了された人も多いはず。サン=サーンスの後に、一番拍手とブラボーを貰っていました。そういえば、リヨン管弦楽団やトゥールーズ・キャピトル管弦楽団を聴いたときにもティンパニの演奏に惚れ惚れしたのを思い出し、フランスのオケを聴くときの一つのポイントになりそうですね。
 
 ラストの「ズンドコ節」のフィナーレも、まことに格調高く、最後はフワッとした音色で締めくくる。いやはや、この曲がこんなに聴き応えがある曲だったとは思いませんでした。まいりました。
 
 前半の時点で、「このオケは凄いオケだ!後半はどんなことになるんだろう・・・」とますます期待が高まっておりましたが、その期待をはるかに上回る演奏でした。このサン=サーンスの交響曲第3番は、大好きな曲です。この曲が作曲された時代は既にドビュッシーは頭角を現している時代。サン=サーンス自身も新しい時代の波を感じながら、模索を続け、交響曲の決定版として世に送り出したのがこの曲。風格があり、リズムや各楽器の見せ場の多さ、鮮やかな転調による場面の移り変わりの妙など、総合力で勝負できるこの曲を持ってきたところが良かったのではないかと感じています。そして前半に登場したリストを、サン=サーンスは尊敬しており、この交響曲もリストに検定されているし、主題が変容しながら循環する、という手法もリストが考えた作曲手法を踏襲している。本当に良く寝られたプログラムです。
 
 そして、倉敷市民会館というホールの残響が比較的少ないホールで演奏されたことによって、オケの合奏能力の高さや個々のパートの技術力、音色の多彩さ、指揮者から繰り出されるリズム、色々な要素を残響のベールを通さずにダイレクトに聴けたことも良かった。
 第1楽章の冒頭の和音から不純物の無いピュアな音。オーボエ・フルートの寂寥感漂う旋律。循環主題を細かく刻むように奏でる弦の上で鳴る木管の切ない旋律、やがて天から光が差すような旋律から合奏の一つの山を迎える、まさにその時のヴァイオリンパートの高音のトレモロの神々しいこと!
 既に3日たった今でも、細かいところまで思いだされます。音色が変化はもとより、音のボリューム感も瞬時に変化する。音量が大きい小さいではなく、盛り上がるところでは音楽が豊満になるというんでしょうか・・・・僕の語彙では到底表現できない音楽の変化。
 ヴィオラやチェロの音が充実してるんでしょうね。コントラバスも低音として支えに回ったり重厚さを表現するだけでなく、軽やかになったり、風を巻き起こしたり・・・。最高潮に達した時の弦パートすべての音がとにかくまばゆかったんです。
 あらかじめ決められているものよりも、その瞬間のひらめきを大事にする。だから、その時その時変化していく音楽に対して柔軟に対応する。客席の体温までも取り込んでどんどん音楽の渦にしていく。

 これがフランスの魂=エスプリなのでしょうか。
 まろやかなホルンの音色やファゴット、そして驚くべきはチューバの音までがまろやかで味わいのある音で、フランスの香りを感じることが出来た。他にも細かいニュアンスの変化も含めて書こうとしたらいくら書いても書き足りません。 
 
 第1楽章第2部からオルガンが入ります。倉敷市民会館にはオルガンがありませんから、電子オルガンで対応。スピーカーが左右の奥に、反響板に向けてセッティングされています。やはりパイプオルガンではないため、オケのアコースティックナ音との間の違和感はありましたが、オルガンの演奏が素晴らしく2分で気にならなくなりました。

 第2楽章のスケルツォ的な第1部。ここのパフォーマンスも圧倒的でした。第1楽章第1部よりも、むしろこの第2楽章第1部を聴いているときに、『これは大変な演奏を聴いている』と、背筋がゾクゾク、体に震えが来ました。
 いよいよ第2楽章第2部、オルガンの派手な和音に導かれますが、これまでの3部に溜めていた切なさや祈り、激しさといったものがすべて解決される、一気に雲一つない抜けるような青空が見えるというか・・・・
 
 この曲の第2楽章第2部(第4楽章って言ってしまいそうになる・・・)は、息つくところが無いんですよ。メロディーが次々に受け渡されていって、 最後のフィナーレまで途切れることなく構成されている。本当に見事な交響曲だと改めて感じます。フィナーレへ向かう手前で第1楽章冒頭で、心のざわめきを表すように登場した主題が、最後の最後で栄光の輝きに満ちた旋律として登場するんですよね。あの瞬間の昂揚感を僕は一生忘れないと思う。
 最後のオルガンも含めた和音の引っ張り方も絶品だった。嵐のように薫り高い音の渦が吹いていたのに、ホールを隅々まで満たす最後の柔らかい和音。今でもずっとこの和音が鳴っているような気がします。
 
 こんなことを素面で書くのは、まことに恥ずかしい(最近、現実世界の方々にどんどん顔が割れつつあるので、なおさら恥ずかしさ倍増!なのですが・・・)ことながら、ヤルヴィ&パリ管のサン=サーンスの交響曲を聴いて、彼らにとって、このシンフォニーは『愛』の表現であるのかもしれないなあ・・・と思いました。男女の愛、家族愛、隣人愛、音楽への愛、聴衆に届けられる音楽は、愛に溢れていたように思います。だからこそ、その演奏を聴いた聴衆は、彼らに「あなた方の愛は、確かに受け取ったよ!」という意思表示をせずにはいられなかった。
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 アンコールは3曲。ビゼーの管弦楽のための小組曲「子供の遊び」からギャロップ、ベルリオーズの劇的物語「ファウストの劫罰」からハンガリー行進曲、最後はビゼーの「カルメン」から第1幕への前奏曲まで演奏してくれました。3曲ともアンコール曲と思えない力の入った(それでいて格調高く優雅な)演奏でしたが、とにかく楽団員さんたちの嬉しそうな表情がとてもとても印象に残りました。
 
 このアンコール曲の曲目確認のために、主催者のくらしきコンサートさんのHPを拝見すると、パリ管にとっても、この倉敷公演は深く印象に残ったとのこと。なんだかうれしくなりました。
       
 次回の来日公演もぜひ聴きに行きたいですね。
 
(追記)
 倉敷公演でのカーテンコールの最後のシーンの動画が、facebookのOrchestre de Parisページにアップされていました。
 
After our last concert in Japan....the orchestra walked offstage after 3 encores!
The wonderful Kurasiki Audience didn't want to let us go....this is what happened.....
 
 

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コメント 4

としゆき

カーテンコール動画をみました!
幸せな空間・ひとときを体感されてうらやましい限りです。
アンコールでカルメンの前奏曲もやられたら、興奮のるつぼでしょう。

おそらくパリ管の団員の多く(あるいは指揮者のヤルヴィさん)も、リハーサル前などに大原美術館を訪ねてると思われますが、フランス本国もうらやむ名画の作品群、とりわけエルグレコの「受胎告知」などを見てしまえば、これほどの文化都市の倉敷で恥ずかしい演奏をして帰る訳にはいかない!と最終日に燃えたのでは?などと勝手に想像してしまいました。
by としゆき (2013-11-13 00:15) 

ぐすたふ

動画のご紹介、誠にありがとうございました!そして、感動を共有できて嬉しいです。

パリ管、この動画をUPしてくれたという事は、喜んでくれた、という証。この気持ちが、ホントにホントに嬉しい!

最高のオケと最高の時間を過ごせた、私たちは、幸せですね。
by ぐすたふ (2013-11-13 19:06) 

ヒロノミンV

>としゆきさん
 コメントありがとうございます。
 フランスから帰られたばかりのとしゆきさんに言うのも変な話ですが、やはりフランスのオーケストラの個性は目映かったです。
 今回のツアーでは、福井公演の翌日という設定のため、オケの皆さんは移動だけでも大変だったかと思いますが、疲れなど全く感じさせない完璧なパフォーマンスでした。副コンサートマスターの千々岩さんがプログラムへの寄稿で倉敷への尊敬の想いを語ってらっしゃいましたので、団員さんにも倉敷の良さを事前にアピールされてたかもしれません。
 そしてやっぱり、あの町並みと、そして大原美術館などに足を運ばれた団員さんは、フランス絵画や西洋文化を尊敬し、倉敷の地元の文化も大事にする街、というイメージを持たれたのではないかと思います。
by ヒロノミンV (2013-11-15 18:13) 

ヒロノミンV

>ぐすたふさん
 この動画は盛り上がりの最後の最後の場面だけなので、オルガン付が終わった後の地鳴りのような拍手や、アンコール3曲でのヴォルテージの上がりっぷりまでは伝わらないのが残念です(笑)
 おっしゃるとおり、ヤルヴィ&パリ管が動画をアップしてくれたことで、彼らが日本の聴衆の熱狂的な反応を喜んでくれていることが本当にうれしいですね!
by ヒロノミンV (2013-11-15 18:16) 

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