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小澤征爾と村上春樹の対談本 [読書(音楽本)]

 「あのね、こんなこと言うと差し障りがあるかもしれないけど、僕はもともとレコード・マニアみたいな人たちがあまり好きじゃなかったんです」
 という小澤さんの言葉にドキッとしながらも(笑)、面白く読みました。

 村上さんと小澤さんが、小澤さんのボストン時代やサイトウキネンの録音を聴きながら、対談を進めていくこの本。なかなか濃い内容でした。村上春樹さん、よくこんな深いところまで聴いているなあ・・・と感心。もっとも、このインタビューのために、もう一度聞きなおして、綿密に練って対談に臨んだんでしょうけれど。

 印象に残ったのは、第4回「グスタフ・マーラーの音楽をめぐって」
 村上さんが、マーラー演奏を通して、ぐいぐい小澤さんの音楽に対する考え方の核心に迫った場面。

 小澤さんはその音楽を総体的に捕らえて、意味とか必然性といった思想的・哲学的名側面を捉える事に、ほとんど意味を見出さない(というより、村上さんとの対談を通して、小澤さんが『僕ってあまりそういう風にものを考えることがない』と気付く!)。楽譜に深く集中して、他のことはあまり考えない。音楽そのもののことしか考えない。自分と音楽のあいだにあるものだけを頼る。

 僕はここに小澤さんの音楽の放つ凄みがあり、西洋文化の核心であるクラシック音楽を東洋人が挑む、という大きな大きな壁を打ち破った、小澤征爾という音楽家の原動力があるのだ、と思うと同時に、「精神性」なるものを重視する国内の評論家筋から決して高い評価ばかりではなかった、その決定的な溝を発見したような気がします。

 この本、本当に面白くて、まだまだ自分の中で整理しておきたい事があるので、また後日書き残したいと思います(ってそんなんばっかりやな・・・)。


小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾さんと、音楽について話をする

  • 作者: 小澤 征爾
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/11/30
  • メディア: 単行本



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コメント 6

親父りゅう

この本、持ってますが棚で順番待ちです。
貴記事読ませて頂き、早く読みたくて仕方なくなっています(笑)。

「僕はもともとレコード・マニアみたいな人たちがあまり好きじゃなかったんです」という小澤さんの言葉は、本当にリアリティがあります。小澤さんだけじゃなく、たぶん、おおかたのプロの人たちがそう思っているのではないかとも思います。
「好き・嫌い」と「良し・悪し」を混同し、過度に「中身」や「意味づけ」を語ってきた音楽愛好家や批評家への「それって違うんじゃない」という小澤さんの紳士的なしっぺ返し(?)化も知れませんね。とにかく読んでみます。
ブログのお引越しされたのですね。拙ブログのブックマークも訂正いたしました。今後ともよろしくお願い致します。

by 親父りゅう (2012-09-23 10:37) 

珍言亭ムジクス

普段は新刊書には目もくれないのですが、これは昨年末に立ち読みしてすぐに買って読みました。

私も村上春樹さんが随分と深く聴いているのに驚き、また小沢征爾さんが実に素直に語っているのに爽快さを感じました。
楽譜を解釈して表現することが全てということが、実際の録音の解説を通して実感できるもので、それはまた聞き手の村上春樹さんへの信頼の表れでもあるのでしょう。

単なる有名人同士の対談ということではなく、将に「音楽について 話をする」本であり、繰り返し読むに値するものだと思います。
後日の追加感想を楽しみにします・・・といっても、無理はなさらないでください。

ところで、小澤さんに学ぶために来た若い演奏家が、まさか世界的作家のHARUKI MURAKAMIにインタビューされるだなんて、その中の村上作品の読者にとっては夢のような出来事だってでしょう。いいなあ、そういう体験ができるだなんて。

by 珍言亭ムジクス (2012-09-23 17:29) 

ヒロノミンV

 小澤さんがレコード・マニアが嫌いな理由は、「音楽」を聴いていない・・・ということで、音楽そのものについて、ファンが色々議論している状況はむしろ喜んでおられるようです。ただ、

>「好き・嫌い」と「良し・悪し」を混同し、過度に「中身」や「意味づけ」を語ってきた音楽愛好家や批評家

 というのは、結局「音楽」そのものを聴いていない、という意味では同じことなのだと思います。
 対談にはバーンスタインの事も沢山登場しますので、親父りゅうさんは楽しんで読まれるのではないかなあ、と思います。ぜひ、感想を聞かせて下さい!

 それにしても、出版不況と言われている一方で、こういう音楽に関する本はどんどん出版されて来ているように思います。一方で僕も読み手としてのスピードが追いついていません(笑)本棚の中には、C.クライバーの伝記本が眠っております・・・

by ヒロノミンV (2012-09-24 00:03) 

ヒロノミンV

>珍言亭ムジクスさん
 コメントありがとうございます。
 小澤さんが自分の音楽づくりや、ボストン・ウィーンでの活動について、ここまで赤裸々に語ったのは、本当に村上春樹さんとの信頼関係ゆえのことだと思います。
 小澤さんの話に出てくる眩いばかりの巨匠たちが、一人の音楽家としての存在をかけて音楽と真剣に向き合う、人間味にあふれる人たちに描かれていて、なんとも言えない感動があります。
 カラヤンとバーンスタインの違いは、人口に膾炙した説だと、強権的VS民主的、みたいな書かれ方が多いものを、小澤さんは『ディレクション』の違いとして捉えられているなど、目から鱗な話が沢山ありました。

 この本で語られた事を、折に触れて自分でも考えながら、音楽鑑賞を楽しみたいと思います。
by ヒロノミンV (2012-09-24 00:14) 

Angela

こんにちは。

こちらの本、ずっと気になっています。
読みたい本はいろいろあっても、なかなかゆっくりと読む時間が無くてついつい飾っておくだけになってしまうものですから。
しかし、感想を読ませて頂いて、これは読まなければ、と思っています。
どちらもそれなりに極められたお二方の対談ですものね。
by Angela (2012-09-24 09:32) 

ヒロノミンV

>Angelaさん
 コメントありがとうございます。
 小澤征爾と村上春樹の対談、というと名前だけで圧倒されていますが、心からの音楽好きどうしの無垢で純粋な会話に、ぐんぐん惹き込まれてしまいます。
 村上さんのアイデアなのでしょうが、「おにぎりを食べる」や「お茶をすする」という、実況まで入って、まるでその場に自分も居合わせたような錯覚を持ってしまいそうです。ぜひ、Angelaさんの感想もお聞かせ下さい。
by ヒロノミンV (2012-09-24 18:44) 

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